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福岡にいた「20年に1人の天才投手」なぜ地元の高校は獲得逃した? 織田翔希は北九州から横浜へ…有望中学生の県外流出ウラ側「織田の存在は知っていた」

posted2025/09/05 11:07

 
福岡にいた「20年に1人の天才投手」なぜ地元の高校は獲得逃した? 織田翔希は北九州から横浜へ…有望中学生の県外流出ウラ側「織田の存在は知っていた」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

中学時代、福岡で「20年に1人」の逸材といわれていた織田翔希(現・横浜)。なぜ地元の高校は獲得を逃したのか

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kashimoto

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Hideki Sugiyama

この夏、高校野球界で一人の監督が勇退した。全国的には無名。取材の打診も一度は断わられた。しかし、高校野球を30年以上追ってきた筆者は、その人物にこそ聞きたいことがあった――福岡県立東筑高野球部を率いた青野浩彦の話である。【全2回の2回目/1回目へ

 福岡県では1985年を最後に、東筑以外の公立校が夏の甲子園に出ていない。今春の県大会で優勝した東筑は、2017年以来の夏の甲子園出場が期待されたが4回戦で敗退していた。

「野球特待生は必要か?」

 参加132チームの福岡を勝ち上がるのは至難の業と言える。全国を見れば、公立校の特色選抜や、学校裁量枠など、地域や学校の特徴を生かした推薦制度を設け部活を活性化させているケースがある。

 だからこそ、今夏に高校野球監督を勇退した東筑の青野浩彦に聞いてみたかったのだ。甲子園に出るためには野球特待が必要なのではないか? すると青野は「ノー」ときっぱり答えた。

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「東筑はもちろん、スポーツクラスはありません。例えば一般のクラスに『勉強が足りないけど野球の技術があるから入学した生徒』が入ったとします。どういうことが起こるかというと、授業についていけなくなるのです。それは、その生徒にとって不幸なこと。野球の技術でうちに入っても、悲劇になるのです」

 現代の高校野球界では珍しいほど明確な考えだ。多くの学校がスカウティングでチームを強化する中で、青野の考えは抜群にシンプルだった。日頃から口にしている「野球で一生食べていけるわけではない」の指導論が軸にある。東筑の選手は「オール4以上」の学力で受験し合格を勝ち取ってくる。

横浜・織田翔希は北九州出身…なぜ逃した?

 ところで、福岡の中学生は野球センスの高い選手が多くいると言われている。プロ野球選手の出身県を調べると、福岡県出身は4位もしくは5位の人数。今年の甲子園を沸かせた横浜高校の2年・織田翔希も福岡県北九州市出身だ。小倉北区の足立中時代はすでに140キロを超える速球を持ち、地元で話題の逸材だったという。織田の“第一発見者”であるトマスさん(ペンネーム)に話を聞いた。トマスさんは西日本スポーツWEBで「トマスさんの特命リポート」を連載している地元のアマチュア野球ライター。12年前から県内の「逸材」を自分の足で探し、記事で紹介している。

【次ページ】 選手の県外流出…背景に“特殊ルール”

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