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「公立と言われても…」甲子園ベスト4・県岐阜商、快進撃の舞台ウラ…“考える力の体現者” 左手ハンディの横山温大は「創意工夫がスゴイ」
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田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/09/03 11:00
準々決勝で延長タイブレークの末に優勝候補本命の横浜を破った県岐阜商のナイン。公立校の快進撃はいかにして起きたのか…
伝統校の矜持を再燃させたOB。鍛治舎のバトンを継いだのが、昨年4月に再び県岐商に赴任し秋に監督となった藤井である。
「私は鍛治舎さんと一緒にいた期間は8月までと短かったんですが、野球に対する情熱や勝ちに対する気迫と言いますか、技術だけではなくそういった財産も残していってくださったんで。私はそこにちょっと塩コショウや醤油をかけて、選手たちとコミュニケーションを取ってきただけです」
そう謙遜するが「チームに新たなエッセンスを加えてくれた」と目を見張るのが、鍛治舎時代からチームにいる上畑である。
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「鍛治舎監督の築いたものを、足し算ではなく掛け算として成長させてくれました」
「考える力」の体現者・横山温大の創意工夫
藤井による掛け算は、守備や走塁、戦略など細部の肉付けである。なかでも選手に求めたのが「考える力」だった。
体現者の象徴がいる。横山温大だ。
生まれつき左手の指が欠損している左バッターは、ハンディキャップを感じさせないほどの創意工夫で成り上がった。今年の春は背番号2桁だったが、監督が「4月からめちゃくちゃ打つようになった」と唸る。
「バットを短く持ったり、ピッチャーによってタイミングの取り方を変えたり、140kmを超えるボールが打てなかった課題を克服してくれた。とにかく工夫がすごい」
横山への関心から徐々にチームの快進撃へ
夏の甲子園で県岐商の初得点を生み出したのは、岐阜大会で5割2分6厘と高打率を叩き出した、横山のバットだった。
日大山形との初戦。0-1の5回、1死二塁のチャンスで、横山のライト前への同点タイムリーから打線が勢いづき、この回に逆転。10年ぶりの甲子園勝利を飾った。
「自分を使うのはとても覚悟がいることだと思うんですけど、自信を持って試合に出してくれて感謝します」
横山は起用してくれる監督に、いつだって頭を下げる。報道の思惑。判官びいきの風潮。大会序盤はまだ、県岐商への主な関心事は横山だった。
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