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「甲子園の感動物語…そんなレベルの話ではない」“左手指のハンディ”感じさせず…県岐阜商・横山温大「ベンチ入りは厳しい」指導者の予想を超えた夏

posted2025/08/14 11:02

 
「甲子園の感動物語…そんなレベルの話ではない」“左手指のハンディ”感じさせず…県岐阜商・横山温大「ベンチ入りは厳しい」指導者の予想を超えた夏<Number Web> photograph by JIJI PRESS

県岐阜商の横山温大(3年)。1回戦の日大山形戦は2安打1打点の活躍で勝利に貢献した

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安藤嘉浩

安藤嘉浩Yoshihiro Ando

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 その試合にハンディキャップを持つ選手が出場していることに気づかなかった観客もいたのではないだろうか。それほど自然に、県岐阜商の横山温大(はると)選手はボールを追いかけ、打って走っていた。

 生まれつき左手の人差し指から小指がない高校3年生が、あこがれの大舞台で2安打1打点の活躍でチームの勝利に貢献した。

「どうなっとるんや」名将が驚いた“スムーズな動作”

 8月11日午前7時過ぎ、阪神甲子園球場。第1試合に臨む両校の選手がそれぞれに試合前の準備を始めた。

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「えっ、左手の指がないというのは、どの子かいな?」

 テレビ中継で解説を務める元・星稜(石川)監督の山下智茂さんにあいさつすると、そんな質問を投げかけられた。

 一塁側ベンチ前で、県岐阜商の選手がキャッチボールをしていた。

 その集団の中に、背番号「9」の横山選手を見つけた。

 右手にはめた左投げ用グラブでボールを受けると、瞬時に左わきでグラブを挟み、その中から右手でボールを取り出し、右腕で投げ返す。

「おおっ、あの子か。んっ? ちょっと待て。どうなっとるんや。左のグラブやね。それで受けて、ああ、右で投げたね。んっ?」

 その一連の動作を自ら真似てみるが、山下さんは頭の中で整理がつかない様子だ。

 それほど、横山選手の動きはスムーズで、なにも特別なことをしていないように見える。まるでキャッチボールの基本動作であるかのようだ。

 シートノックが始まった。ここでも、ごく自然に右手にはめた左投げ用グラブでゴロやフライをキャッチし、何事もなかったかのように右腕で返球する。その間に踏む足の運び、ステップも、他の選手とまったく変わらない。

 一度だけゴロの打球をファンブルしてしまう場面があった。すぐに拾い上げて返球する。その姿ですら、なんの違和感もない。

 生まれつき左手の人差し指から小指がない横山選手が、兄の影響で野球を始めたのは小学3年生だった。中学までは投手もしていたという。なるほど、ライトからの返球を見ると、スローイングのレベルも高い。

【次ページ】 「ベンチ入りは厳しい」と言われていた下級生時代

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