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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「頭蓋骨に穴を開け神経を焼く」「手術後は頭に激痛」名ランナー・神野大地が語る難病ジストニアとの闘い「走りで結果を出して同じ病の人に希望を」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/08/29 11:06
難病ジストニアの手術の末、足の不調も回復しているという神野大地。その経緯を率直に語った
同じ病の人たちの希望になれれば
神野が走りに意欲的な理由は、手術が成功したことだけではなかった。ジストニアの手術を受けたことを公表した際、その反響と同時に、同じ病気で苦しんでいる人からの声が多く寄せられた。自分の経験が、少しでもそういう人たちの役に立てばと思えたからでもある。
「僕が手術前にジストニアであることを公表しなかったのは、みんなに心配されたり、不安なことを言われるのが嫌だったからなんです。でも、術後に公表したら同じ手術をしている人がSNSにコメントをくれたりして、たくさんの人が苦しんでいることを初めて知りました。
これから僕がレースで結果を出せば、手術を迷っている人がやっぱり受けようと決断してくれるかもしれない。陸上界にもジストニアで引退したり、今も苦しんでいる人がいるので、そういう人たちにも希望を与え、陸上界に新しい道を作れるんじゃないかなと思っているんです」
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新たなやりがいをひとつ見つけた神野だが、もしかするとジストニアからの復活を遂げたシンボル的な存在に昇華するかもしれない。
つらかったのは頑張れないこと
走ることが回復しつつある今、苦しんだ2年間の期間を振り返り、神野は、しみじみとこういった。
「僕はこれまで、努力を続けて自分のポジションを築いてきたという自負があったので、頑張れないことが本当につらかったですね。努力ができる状態に体があるということは当たり前じゃない、というのも実感することができました。今は、また努力できることが、すごく幸せです。
なかなか壮絶な人生を歩んでいますが、これからマラソンで自己ベストを出したり、もう一度オリンピックに挑戦するとか、少なくともそういう気持ちで頑張っていける。僕は、自分の人生をまだ終わらせたくないので」
これから完全復活に挑む道は、ジストニアの時とは苦しみが異なるが、より厳しいものになるだろう。だが、その挑戦こそが、一度は終わりかけた神野の競技人生を紡いでいくことになる。
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