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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「頭蓋骨に穴を開け神経を焼く」「手術後は頭に激痛」名ランナー・神野大地が語る難病ジストニアとの闘い「走りで結果を出して同じ病の人に希望を」
text by

佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/08/29 11:06
難病ジストニアの手術の末、足の不調も回復しているという神野大地。その経緯を率直に語った
「僕は、手術が怖いので入る前からずっと目をつぶっていました。反応や感覚が良くなったのかどうかは分からなくて、ただ電気が手の指先から足の先まで通る瞬間は分かるし、先生に言われたことをやっていくうちに、『もう大丈夫』と言われて終わったんです」
術後「人生で一番の激痛」が
1時間ほどで手術が終わり、頭につけたフレームを取ると、堪えようがない頭痛に襲われた。
「フレームを取った瞬間、頭が半端なく痛くて。ケニアで中耳炎になった時、何を食べても吐くし、耳から血が出るし、死ぬほど耳が痛かったんです。でも、今回の痛さはそれ以上でした。本当に痛すぎる時って、じっとしているのが無理なんですよ。もう痛いですって言って手術台のベッドで暴れていたんです。看護師さんが痛み止めを打ってくれて自分の病室に戻り、30分ぐらいしたら痛みが我慢できるレベルになってきましたが、自分の人生で一番の激痛でした」
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翌日も頭に痛みがあったが、お見舞いに来てくれた人と話をしたり、携帯を見たりすることも可能になった。それから5日ほどで退院し、運動する許可をもらってジョグをすると、走る際の感覚が手術前と大きく異なることが分かった。
「感覚的にいうと抜け感がなくなりました。何も気にせずに走れるかというと、そこまでのレベルには至っていないんですが、最初から8キロをアップした後ぐらいの感覚で走れるようになったんです。それで走るモチベーションが復活しました。それがうれしかったですね。手術前は泣きたくなるぐらい走るのが嫌だったし、走るモチベーションを失っていたので」
医師からは、「再発症の可能性はゼロではないが、術後の経過も良く、走りの感覚が良いならこれからどんどん良くなる」と言われた。手術の副作用で、きれいに字を書こうとしてもうまく書けないが、医師からは「のちに戻るよ」と言われ、ホッとした。
70%程度まで回復
走ることについては、まだ回復途中だが、術前が100%中20%だとすると、70%ぐらいまで戻ってきているという。残り30%をどのくらいの期間で戻せるのか。個人差があるのでなんともいえないが、「あとは突き進むだけ」という前向きな気持ちでいられるようになった。
はたで聞いている方としては、それならもっと早く手術を決断しても良かったのでは、とも思うのだが……。

