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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝“山の神”に「絶対なりたい、とは思わなかった」東洋大・宮下隼人が逃した“神”にいま思うこと「5区の区間記録はプライドでした」
posted2025/01/07 17:20
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Hideki Sugiyama
「僕は、是が非でも山の神になりたいというのがなくて、チームの足を引っ張らずに少しでも貢献することを意識していました」
宮下隼人(東洋大―コニカミノルタ)は、そう語る。
2020年、東洋大2年の時、第96回箱根駅伝の5区を70分25秒で駆け上がり、区間記録を更新した。その大会で東洋大は総合10位に終わり、宮下は「山の神」にはなれなかった。だがその区間記録を生んだことで、周囲の期待は大きく膨らんだ。それを背に、3年生、4年生と5区を駆けていくことになった。
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その道は、東洋大のある先輩が経験したものに少なからず似たものがあった。
子ども心に「この人すごいなぁ」
宮下がその先輩をテレビで見たのは、小学生の時だった。
「小6の時かな、箱根駅伝を見ていたんです。山をすごい勢いで上っていく選手がいて、当時、野球をしていて野球しか知らない僕ですら『この人すごいなぁ』って衝撃を受けたんです。それが柏原(竜二)さんでした。陸上をやっていない人さえも魅了する、応援したくなるガッツある走りがすごくて、箱根駅伝イコール山のイメージがつきました」
それ以来、柏原のファンになった。
宮下はその後、東洋大に進学した。あまりのレベルの高さに最初は、ついていけるのか心配になった。だが必死に練習に取り組み、真面目な生活態度が指揮官の目を引いたのか、宮下は5区の強化合宿に入ることができた。
もしかして山を走れるかもしれない
出身高校は陸上がそれほど強くなかったこともあり、トレイルを走るなど、いろいろな練習をこなしてきた。その蓄積があったのだろう。上りで持ち味を発揮し、合宿最後のトライアルで1番になった。
「たまたま1番になれたのですが、これは自信になりました。それまでインターハイなど高校の実績がないし、タイムも遅いので気持ち的に引いていた部分があったんです。でも、それから気持ちが積極的になりましたし、これはもしかして山を走れるかもしれない、と5区が現実味を帯びてきた感がありました」