- #1
- #2
甲子園の風BACK NUMBER
横浜高・松坂大輔と「奪三振ゼロでも13回まで投げ合えた」のちにヤクルトで最多勝・館山昌平の原点「“怪物”がいなくてもチャンスはある」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byNumberWeb
posted2025/08/28 11:02
現在は社会人野球マルハン北日本GIVERSの監督として新出発している館山
「野手なら一塁までしっかり走れるとか、どう準備しているとか、チームメイトをどう迎え入れているかとか、そういったところまで見て判断します。たとえば、キャプテンの安保(勇咲)選手は、亜細亜大学4年時には一度もバッターボックスに入っていなくて、3年時に代打、守備固めで1~2イニング出たくらい。大学での実績うんぬんより、彼は一つのプレーが完了するまで絶対に目を切らないんですよね。シートノックのときにも、誰よりも声が出ています。こういった姿は(チームの)基礎になるんじゃないかと思い、(キャプテンに)決めさせてもらったんです」
野球に対する真摯な姿勢なくして、個の成長はない。ニチフジの100カ条の最初に記される「野球とは移り変わる状況判断と個人プレーの結集」もない。チームが掲げるスローガンは、「共創」を意味するコ・クリエーション。指導者が押しつけるのではなく、意見交換しながら指導者も選手も一緒になってチームをつくっていくことを大切にしている。
チームは今年6月、初めて都市対抗野球東北予選に出場し、2次予選で初勝利を挙げるなど、一歩ずつ前進している。
いまも高校時代と同じ精神で
ADVERTISEMENT
「選手のみんながトライできる環境をしっかりつくっていきたい。チーム立ち上げから3年で全国ベスト4、5年で都市対抗、日本選手権いずれかを優勝という目標に、みんなで向かっていきたいと思っています」
目標は高くあっていい。
強い者が勝つ野球ではなく、勝つ者が強い野球。たとえ怪物はいなくとも、知恵を絞って各々が高めていけば可能性があるんだ、と高校時代に身をもって経験した。同世代に松坂大輔がいたから、それを心に刻むことができた。
マインドは高校時代と変わらない。社会人野球に場所を移し、野球の醍醐味に触れようとする館山昌平が今もいる。
〈全2回の2回目/はじめから読む〉

