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野球善哉BACK NUMBER
甲子園「今大会最高の名勝負」で横浜が見せた“日本野球の真髄”とは何か? 見逃されがちな「高度な守備戦術」vs県岐阜商の打力の攻防を振り返る
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氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/26 11:03
16安打を放った県岐商の打棒を、横浜が高度な守備戦術で阻み続けたことが名勝負を生んだ
昨秋の神宮大会で、村田監督がそんな話をしていた。まさに横浜の真髄はこの準々決勝に集約されていた。思えば県岐商に16安打も打たれていたのに対して、6安打だった横浜が接戦に持ち込めた要因は、ひとえにその洗練された野球にあった。
今大会を回想すると引き締まった試合が多かった。昨年からの低反発バット導入で長打力が落ちているという中で、守備の重要性を再認識した大会でもあった。優勝した沖縄尚学は二人の投手を擁して堅実に守った。だが、沖縄尚学の比嘉公也監督は決勝戦の試合後に、意外なことを口にした。
「エースの末吉(良丞)は、バント処理や、投げる以外の部分に課題が多く出ました。ピッチャーは投げるだけではいけない。彼はまだ2年生なので、この課題を持ち帰りたいと思います」
甲子園を引き締めた横浜の「日本野球の真髄」
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走・攻・守、どの部分に力を入れるかはチームの方針による。ただ、どこを主眼に取り組むにせよ、高校野球だけで完結してしまうような戦略・戦術であったなら、それは高校球児の未来を切り拓かないだろう。
横浜が準々決勝で見せた野球は、日本野球の真髄だった。正直、筆者の20年以上の甲子園取材歴の中で、これほどまでに興奮した試合はそう多くない。横浜ほど徹底して取り組むことは簡単ではないと思う。練習時間の短い高校では難しいかもしれない。ただ、横浜の戦いには、本来誰もが目指したい「手本」のようなものがあったのは間違いなかった。
横浜高校によって、引き締まった2025年夏の甲子園だった。
〈横浜で受け継がれる野球哲学とは? 前編から読む〉

