- #1
- #2
野球善哉BACK NUMBER
改めて問いたい甲子園「今大会ベストゲーム」それは準々決勝横浜―県岐阜商だった…名勝負を生んだ横浜の「洗練された野球」は何が違うのか?
posted2025/08/26 11:02
今大会のベストゲームどころか、高校野球史上でも屈指の好ゲームとなった準々決勝、横浜vs県岐商戦
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
熱戦が毎日のように展開され、例年以上に盛り上がった甲子園大会。さまざまな話題が生まれたなかでも、純粋に野球の面で、今大会ベストゲームといえる試合だったのが準々決勝の横浜対県岐商だ。この試合を名試合たらしめたのは、極めてハイレベルな横浜の野球哲学だった。〈全2回の前編/後編につづく〉
さすがにこの場面ではやってこないか。
日大三高―沖縄尚学による決勝戦の終盤。ともに手堅い野球で、走者が出れば必ず送りバントの作戦が繰り返される中、それを阻止しようという守備戦術を取らぬ両チームを見て、これが両校のスタイルなんだなと思った。
日本の野球は戦術が洗練されている。そう言われるのは、送りバントに代表されるようなスモールベースボール、小技での攻撃に長けているから——だけではない。攻守両面の繊細さゆえだ。送りバントは走者を高い確率で次の塁へ進める戦術だが、一方で、それをさせたくないという心理も働く。その中での守備戦術もまた、日本野球の得意とするところである。
守備戦術を突き詰められない高校もある
ADVERTISEMENT
日本野球の最高峰であるプロ野球では、まさにその最上級の戦術が駆使されるが、高校野球の世界では、チームによりけりだ。監督の思惑とすれば、できれば最後まで突き詰めたいところだろう。しかしそれを追求できるかどうかは、練習時間や、選手の動きの質、野球観といったチームの事情によるところが大きい。
例えば守備をメインにチームづくりをするような指揮官であれば、バントシフトの戦術が徹底されるだろうし、攻撃型スタイルを主眼に置くチームでは、そこまで守備に取り組む時間を作らないという違いが出てくる。個々人の選手がプロに入った時にはこうした守備戦術は必須の要素になるが、高校時代にどのチームでも取り組むかと言えば、決してそうではないのが現状だ。

