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投手・大谷翔平は「異次元の完成形へ」「苦戦ドジャースの新戦力」今季もMVP最有力の理由は“手術前より進化”160キロ剛速球だけでない 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/08/18 17:02

投手・大谷翔平は「異次元の完成形へ」「苦戦ドジャースの新戦力」今季もMVP最有力の理由は“手術前より進化”160キロ剛速球だけでない<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

投手復帰した大谷翔平。数値的に見てもフォーシームなどで進化が見られる

 今季売り出し中の新人ミジオロウスキーや、一時は二刀流に挑むといわれ「大谷二世」と言われたスキーンズなどに伍してトップクラスの球速である。

 念を押したくなるが――大谷は先発投手としてこの球速のフォーシームを投げながら「本塁打王争い」をしているのだ。

回転数だけでない“異次元レベル”突入の要素とは

 それ以上に注目すべきは「回転数」である。

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 一般的に投球は、回転数が大きくなれば、バックスピンがかかって打者からは浮き上がって見え、打ちにくくなる。大谷はNPB時代、球速は出ていたものの回転数はそれほど多くはなかった。2100~2200回転は、NPBでもMLBでもほぼ平均値だった。MLBでは徐々に回転数が上がっていたが、今季は2435mph、大谷のフォーシームは大きくホップして見えているはずだ。

 確かに今年は、大谷の浮き上がる速球に打者が空振りするシーンをよく見る。大谷のフォーシームは2度目の手術前とは異次元のレベルに達していると言えよう。

 大谷は単に球速、回転数で見て「球が速くなった」だけではない。投球精度も大きく進化している。以下はSO9=9イニング当たりの奪三振数、BB9=9イニング当たりの与四球数、SO/BB=奪三振数÷与四球数の推移。

2018年:BB9=3.8、SO9=11.0、SO/BB=2.86
2020年:BB9=43.2、SO9=16.2、SO/BB=0.38
2021年:BB9=3.0、SO9=10.8、SO/BB=3.55
2022年:BB9=2.4、SO9=11.9、SO/BB=4.98
2023年:BB9=3.8、SO9=11.4、SO/BB=3.04
2025年:BB9=1.9、SO9=12.3、SO/BB=6.40

 もともと大谷は速球で押すタイプで、制球力はそれほど良くなかった。しかし今季のBB9は1.9。完投しても2個以下という精度の高さだ。

 SO9が9を越えれば「パワーピッチャー」と言われる。わずか2試合しか投げなかった2020年を除けばSO9もキャリアハイ。12.3は、規定投球回数以上で最高のザック・ウィーラー(フィリーズ)の11.73を上回っている。そして投手にとって最も重要な指標の一つとされるSO/BBもキャリアハイになっている。

スイーパー、スプリッターのイメージがある球種だが

 では、各球種の配球はどうなっているのか?

【次ページ】 苦戦ドジャースにとって投手・大谷は“新戦力”

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