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投手・大谷翔平は「異次元の完成形へ」「苦戦ドジャースの新戦力」今季もMVP最有力の理由は“手術前より進化”160キロ剛速球だけでない
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2025/08/18 17:02
投手復帰した大谷翔平。数値的に見てもフォーシームなどで進化が見られる
〈2018年〉
フォーシーム46.4% スイーパー24.6%
スプリッター22.4% カーブ6.6%
〈2020年〉
フォーシーム48.8% スイーパー28.8%
スプリッター16.3% カーブ6.3%
〈2021年〉
フォーシーム44.0% スイーパー21.9%
スプリッター18.1% カーブ3.4%
カットボール12.3% スライダー0.3%
〈2022年〉
フォーシーム27.3% スイーパー37.4%
スプリッター11.9% カーブ8.4% カットボール8.9%
シンカー3.7% スライダー2.4%
〈2023年〉
フォーシーム32.9% スイーパー35.1%
スプリッター5.8% カーブ3.7% カットボール12.2%
シンカー6.5% スライダー3.7%
〈2025年〉
フォーシーム45.3% スイーパー28.6%
スプリッター3.8% カーブ1.6% カットボール3.0%
シンカー7.0% スライダー10.8%
MLBに移籍当初は主に速球、スイーパー、スプリッターを投げる投手だった。日本人投手によくある配球だったが、トミー・ジョン手術明けから球種を増やしていった。
苦戦ドジャースにとって投手・大谷は“新戦力”
2022年にはスイーパーの球数がフォーシームよりも多くなる。そしてスプリッターの比率が小さくなった。2023年WBCで当時同僚のアメリカ代表マイク・トラウトをスイーパーで空振り三振に取ったシーンは強烈に記憶に残っているが、2度目の手術後の今季は再びフォーシームの比率が増えている。前述のとおりフォーシームの球速、威力が増したことで、これを一番の武器にして配球を組み立てなおしたのだ。
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投手に復帰した当初は、シンカーを多投していたからシンカーボーラーになるのかと思えたが、大谷は投球を重ねる中で「使える球」を徐々に選別した。かつてのマネーピッチ(決め球)だったスプリッターはデビュー時の7分の1に。そしてスイーパーに加えて、縦に変化するスライダーも投げるようになっていった。
ロバーツ監督は、今季は5回を超えて投げさせる気はないようだ。ということは、好投しても勝ち星がつく可能性は低いだろうし、規定投球回数にも遠く及ばない。しかし例によって投手陣が崩壊状態になり、規定投球回数に到達した投手が山本由伸しかいない現状では、5回を任せられる大谷は、貴重な戦力である。
昨年同様、パドレスと激しい首位争いに突入したドジャースにとって、打者・大谷翔平に加えて投手・大谷翔平は、苦しいチーム事情にあってリアルな新戦力になりつつあるといってよいだろう。
MVP争い“最重要指標”はどうなっているか
最後に――8月15日時点でのナ・リーグの選手の総合指標WARランキングを2つのデータサイトから見る。

