野球クロスロードBACK NUMBER
「『バカなことをしてるな』という人もいるけど…」甲子園にメジャーのセーブ王が登場?「豊橋中央のイノキ」が見せた“燃える闘魂”だけじゃない実力
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/12 17:00
初出場の豊橋中央のエース・高橋大喜地。普段は端正な顔つきだが、ピンチの際にはあの「イノキ」の顔に!?
真っ赤な目に涙を溜めた高橋に、アントニオ猪木関連の質問が矢継ぎ早に飛ぶ。試合に敗れ、悔しさが残るなか必死に笑顔を作り、嫌そうなそぶりを見せず報道陣に訴えていた。
「『バカなことをしてるな』という人もいるけど、気にしていたらできないんで。小さい頃から人を楽しませることが好きで、自分が楽しくプレーしている姿を楽しんでくれる人がいれば、自分も嬉しいです」
この想いだけで十分だ。
ADVERTISEMENT
断じてふざけてなどいない。真剣に野球を楽しんでいる。これが、高橋の素なのだ。
監督は「一歩を踏み出す勇気をつけよう」
それは、監督の萩本将光のリアクションに触れ、合点がいく。5回のピンチで見せた猪木顔について、萩本は「そうなんですか? ベンチが一塁側だったんで見えなかったんです」と、本当に気づいていない様子だった。
「いつもニコニコしている子なんで、何をやっているかよくわからないんです。私は彼だけでなく、全員の個性を大事にしているんで。良い、悪いは、やってみてから判断するべきだと思っています。『これはダメだ』とやる前から決めつけたら、大人になってから行動できない人間になってしまうじゃないですか。だから、『一歩を踏み出す勇気をつけようよ』と。そうじゃなかったら、甲子園でもいいプレーなんてできませんから」
鷹揚な監督が、高橋の燃える闘魂を真っすぐに育ませた。
きっとまた、あのピッチャーみたいな個性的な選手が見られるに違いない。
それが、豊橋中央が初出場の甲子園で残した燃え滾る足あとだった。

