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「背番号11」ドラ1左腕が21歳で戦力外…元ヤクルト「アキラ」伊藤彰のいま「全てを失った男として」大学入学→“いつか神宮へ”第二の人生
posted2025/08/12 11:06
ヤクルトにドラフト1位で入団した「アキラ」こと伊藤さん。現在は山梨学院大のコーチをつとめる
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
NumberWeb
故・野村克也監督時代のヤクルトスワローズに、高校ナンバーワン左腕の期待と共に入団したドラフト1位投手がいた。登録名は、「アキラ」。わずか4年でプロの世界を去った左腕の野球人生と、その後の歩みはどんなものだったのか。現在は山梨学院大学の硬式野球部コーチをつとめる伊藤彰さんに聞いた。〈全3回の3回目／第1回、第2回も公開中〉
「ドラ1左腕」として鳴り物入りで門をくぐったプロ野球生活は、わずか4年で終わりを迎えた。高校時代から向き合ってきた左肩の怪我。長く辛かった闘いから解放される安堵感の一方で、21歳の前には「戦力外通告」という現実が突きつけられていた。
「情けなくて、歯痒くて悔しくて……。野球ができない自分には何が残るんだろう。これからどうするんだろう、という思いが一気に押し寄せてきました」
息を呑んだ幹部からの一言
現役引退を決断した伊藤さんは、挨拶回りのため親会社のヤクルト本社にも訪れた。故障に悩まされた4年間面倒を見てもらったことの感謝を伝え、今後のことなどを話し合っていた時のこと。秘書室長を務めていた幹部から、ぴしゃりと言葉をかけられた。
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「ネクタイ、緩んでいるぞ！」
鋭い眼差しだった。思わず息を呑み、身を硬くした。
「ビックリしました。冷や水をかけられたような……。でもその後、すごく優しく話しかけてくれて、本社がある新橋で夕食をご馳走してくれた。後々になって、進路のことで相談に乗ってくださったのもその方でした。
今なら分かります。戦力外通告を受けて将来のことを相談しに行くのに、ネクタイを緩めていくわけがない。実際に緩んでいたのかはさておき、その方は、これから進んでいく世界はプロ野球の世界とは違うんだぞ、見られる視点や求められるものも違うんだぞ、と伝えてくれたのだと思う。実際にその時私は背筋が伸びる思いでしたし、今でも鏡を見てネクタイを締める時、ふとその言葉が聞こえてくる時がある。そうだ、気を緩ませちゃいけないぞ、って」
