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「『バカなことをしてるな』という人もいるけど…」甲子園にメジャーのセーブ王が登場?「豊橋中央のイノキ」が見せた“燃える闘魂”だけじゃない実力
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田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/12 17:00
初出場の豊橋中央のエース・高橋大喜地。普段は端正な顔つきだが、ピンチの際にはあの「イノキ」の顔に!?
あごを突き出し、キャッチャーのサインをのぞき込む。キンブレルはない。この時の高橋は本来の自分を取り戻していた。
小学4年生からバッテリーを組む松井蓮太朗は、このピンチで「いっぱい、いっぱいだった」という。そこでマスク越しに見た、幼馴染みの燃える闘魂に力が漲った。
「1点もやれない場面で猪木顔が見れて安心しました。自分もそこに乗っていこうと思って、自分らしくプレーできたというか。あの時、大喜地に感謝しました」
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ふたりの呼吸が噛み合う。
初球はカーブでファウルを奪う。そして、2球目も猪木顔で頷く。136キロのストレートで田中をセカンドフライ。窮地を脱した。
「あの場面では気持ちを入れようと思って、自然と出ました」
高橋の本領発揮に、甲子園が揺れる。
ところが、実際の彼はこのあたりから少しずつ異変に気付き始めていたという。
「もっと自分を解放できなかったかなと、思うところはありました」
素早いセットポジション。キンブレル。そして、猪木顔。強打の日大三相手に初回から手札を出してきたことによる疲労が表れる。ボールが浮き、抜けるといったように、マウンド上での自分を制御できなくなっていったという高橋に魔が差したのは8回だった。
確かな実力も見せた“燃える闘魂”
5回のピンチで抑えた主砲に、138キロの内角ストレートをレフトスタンドまで運ばれた。決勝点となる、痛恨の一発。高橋は、「体力不足、力不足」と悔やんだ。
試合には敗れた。しかし、日大三打線を4安打、3失点に抑えたピッチングは、高橋の燃える闘魂が単なるパフォーマンスではなかったことを雄弁に物語っていた。
「楽しく野球ができてよかったです」

