「『バカなことをしてるな』という人もいるけど…」甲子園にメジャーのセーブ王が登場？「豊橋中央のイノキ」が見せた“燃える闘魂”だけじゃない実力 

　序盤にフォアボールを出す。多くのピッチャーは一塁ランナーを目視してからスーッとセットに入るところ、高橋は時折、それを猛スピードで展開する。

「もっと泥臭くプレーしたいということで、去年の紅白戦とかで試したら『結構、ランナーが戻るな』って思ったのでやってます」

まさかの「MLBの名クローザー」が出現

　俊敏な動きでランナーを釘付けにしたかと思えば、今度はバッターに睨みを利かす。

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　キャッチャーのサインを確認しながら右腕を水平に上げ、手をぶら下げる――メジャーリーグで通算440セーブを記録するクレイグ・キンブレルの“威嚇ポーズ”。実際に相手を挑発する意図はなく、あくまでポジティブにするためだと高橋は説明する。

「“猪木”をやらないと『暗い』と監督に言われたので。去年からやっているんですけど、久しぶりにやりました」

MLBの名クローザーだったキンブレル　©Getty Images

　猪木は封印している。ただ、一塁側アルプススタンドが高橋をたきつける。

　ピッチャーの高橋が打席に立つ。

　1・2・3・ダー！

　アントニオ猪木の定番だった掛け声を合図に、登場曲の『炎のファイター』が流れる。演奏するのは、愛知大会決勝で激戦を繰り広げたライバル、東邦のマーチングバンド部である。友情応援を快く引き受けたという名門ブラスバンドの美爆音によって、高橋は2回に甲子園初打席初ヒットを放った。

「好きな猪木さんの応援を東邦さんがやってくれて感謝しています。『楽しもう』と思いましたし、力になりました」

　燃える闘魂が、ふつふつと沸き起こる。

　それは、3回に2点を先制されて迎えた5回、2死一、二塁のピンチ。日大三の4番・田中諒と対峙した場面である。

　高橋が、封印を解く。

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