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セで異常事態「3割バッター消滅危機」近本光司・中野拓夢・佐藤輝明の首位打者争いは「.290台ギリギリの低打率」背景の“2大要因”とは
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/08/12 17:01
現時点で首位打者の阪神の近本光司。ただ打率は同僚の中野拓夢、佐藤輝明とともに.290台前後である
一時期は.290台の選手さえいない状況が続いたが、阪神の近本と中野が調子を上げてきた。阪神はすでにマジック28が点灯している。早々にリーグ優勝を決めれば、選手は個人成績に専念できるゆえに、3割打者消滅の危機は回避できる可能性はある。
ただ規定打席以下の選手を見渡しても、DeNAの宮﨑敏郎の.285(267打76安)がいる程度で、規定打席に到達して3割に浮上しそうな打者は見当たらない。
なぜセ打者が低調なのか…見逃せない2大要因
それにしても――なぜ今季のセ・リーグ打者の打撃がここまで低調なのか? 一つ、見逃せないデータがある。
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【規定打席到達選手の激減】
今季のセ・リーグの規定打席到達者は、わずか「17人」。長いNPBの歴史の中でも、極端に少ない。
〈規定打席到達者が少なかったシーズン〉
21人:1958年パ、2013年セ、2022年パ
22人:2023年パ
23人:2024年パ
レギュラー選手とは普通、規定打席に到達した選手のことを言う。規定打席は「試合数×3.1」で算定され、143試合では443打席となる。セ・パが6球団体制になった1958年以降で言えば、1989年パの39人を最多として例年、30人前後の規定打席到達者がいた。「打撃30傑」という言葉もあった。近年、規定打席到達者が減少する傾向にあったが、今季セの17人はあまりにも少なすぎる。内訳はこうなる。
〈巨人3人、阪神5人、DeNA2人、広島3人、ヤクルト1人、中日3人〉
阪神を除く5球団は、野手の8つのポジションのうち、半分以下しかレギュラーを固定できていない。
育成選手の増加もあって、今のNPB球団は多くの選手を抱えている。選手の登録、抹消も頻繁に行われるようになった。それもあってレギュラーを固定できないポジションが増えていると推測される。野手はレギュラーに固定されてこそ打撃成績が向上する。出たり出なかったりする選手の打撃成績は上がりづらい。3割打者消滅と規定打席到達者激減は、大いに関係があるのではないか。
岡本、村上、牧にオースティン…大物打者が離脱
【大物打者の大量離脱】
もうひとつ、昨年のセ打率5傑は以下の通りだった。
オースティン(デ).316(396打125安)
サンタナ(ヤ).315(419打132安)
牧秀悟(デ).294(517打152安)
細川成也(中).292(534打156安)
秋山翔吾(広).289(547打158安)
今年とは大きく異なっている。

