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「近大にものすごいバッターがおる」入学前の佐藤輝明を岡田彰布が見ていた…恩師が明かす阪神との奇縁「とんでもない三振もしてたけど」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/31 11:04
近大から阪神にドラフト1位指名され会見する佐藤と田中監督。じつは佐藤と阪神には不思議な縁が重なっていた
「だから、空いているポジションが外野しかないと思って、外野で使いました」
つまりは消去法で、空いているところにはめ込んだ?
「ま、そうですね。外野もできます。まあ、ただ、パッとできるといっても、ちょっと何してんねん、っていうプレーもありましたけど、あくまでこっち(打)が期待ですから」
じつはセカンドもいける?
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話は前後するが、2年秋には三塁を守らせ、さらには大学3年時に佐藤を「セカンド」へコンバートすることを、田中は真剣に検討したのだという。
「ちょっと、守らせてみようか。結構、やりよるかもしれんで」
ノックでの動きの良さにひらめいた田中が、野手担当コーチの松丸文政に指示。するとゲッツー時のターンも、ゴロを捕る際のハンドリングも柔らかい。
「これ、セカンドいけるな。西武の辻(発彦)以来の大型セカンドちゃうか、っていうくらい、うまかったんですよ」
大学ジャパンで右肘を痛めた影響で、3年時には肘の負担を軽減するため、結局リーグ戦では一塁で佐藤を起用しているが、いずれにせよ、佐藤の器用さを物語っている。
1982年から94年までの15シーズンで日本一8度、90年から3年連続日本一、5年連続リーグ制覇という西武の黄金期に二塁を守り、ゴールデングラブ賞8度を誇る名内野手・辻発彦は、身長1メートル82。佐藤も公称1メートル87だから、田中が「セカンド・佐藤輝明」を辻にダブらせ、その理想像としたのもうなずける。
佐藤はプロ2年目の2022年8月26日の中日戦(バンテリンドームナゴヤ)でセカンドを守っているのだが、5年目を迎えた時点ではその一度だけ。しかし、ひょっとしたら、その新たなるオプションは、阪神の未来図の中で生かされる時が来るかもしれない。
近大に、ものすごいバッターがおる
その順応性の高さは、大学の入学前から早くも発揮されていた。
3月のオープン戦では、社会人との対戦で弾丸ライナーの鋭い打球を飛ばし続け、社会人の選手たちが「えっ? あいつ、誰?」。
近大に、ものすごいバッターがおるぞ——。

