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「近大にものすごいバッターがおる」入学前の佐藤輝明を岡田彰布が見ていた…恩師が明かす阪神との奇縁「とんでもない三振もしてたけど」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/31 11:04
近大から阪神にドラフト1位指名され会見する佐藤と田中監督。じつは佐藤と阪神には不思議な縁が重なっていた
そんな噂が、早くも広まり始めていた入学前の3月のある日。今から振り返れば、これぞまさしく“運命の導き”だろう。
岡田彰布が、近大のグラウンドにやって来た——。
佐藤の大学入学前、つまり、2017年3月の春休み期間中のことだった。
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練習試合を組んだ早大が、奈良・生駒へやって来た。練習試合の先発は、佐藤と同期、つまりは早大入学を控えていた左腕・早川隆久。千葉・木更津総合高では、3年の春・夏ともに甲子園に出場し、いずれもベスト8進出と、この時点の佐藤とは立ち位置が違う。
岡田彰布は入学前の佐藤を見ていた
岡田が、2度目の阪神監督に就任するのは2023年のこと。だから、当時の岡田は浪人中だ。母校・早大の関西遠征で、しかも期待のルーキーも登板するとあって、岡田はわざわざ、生駒にまで足を運んだのだ。
「監督、今年1年生で入ってくる子なんですけど、僕、この子は将来、プロやと思っているんです。ちょっと、見てやって下さい」
岡田とはすでに面識のあった田中は、練習試合の始まる前に、岡田に“未来のプロ候補”として、佐藤のことを伝えていたのだ。試合後「ええ選手ですね」とその感想を残していった岡田は、2度目の阪神監督就任時に「俺、佐藤を見とんよ、入学前に」と、その出会いのエピソードを披露している。
熊野が明石で、岡田は生駒で、佐藤輝明を見ていた——。
やっぱり、阪神に入るべくして入った!?
そして、2020年のドラフト会議で、阪神、巨人、ソフトバンク、オリックスの4球団競合の末、阪神が引き当てる。しかも、佐藤の3年目の2023年、岡田が15年ぶりに阪神監督に復帰する。ここまで奇縁が重なれば、佐藤輝明はやっぱり、阪神に入るべくして入ったのではないかと思えるほどの、不思議なエピソードの積み重なりでもある。
田中が見込んだ通り、佐藤は着実に成長の階段を上っていく。

