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1スイング見て「これは絶対プロになる」無名だった高校時代の佐藤輝明に近大元監督が受けた衝撃「裏技を使ってでも絶対に入学させようと」
posted2025/08/31 11:03
近大時代の佐藤のバッティング。恩師・田中秀昌監督は無名だった高校時代の佐藤の1スイングを見ただけで、その才能を確信したという
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph by
JIJI PRESS
佐藤輝明との出会いは、一本の電話がきっかけだった。
「田中君、面白い選手がおるねん。一回、ちょっと見てくれへんか?」
2016年5月頃のことだったという。
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兵庫・仁川学院高の元野球部監督・馬場弘行から、田中秀昌のもとに“選手獲得のお願い”があった。この時点で田中の率いる近大では、系列校以外からの推薦枠15人はすべて埋まっていた。それでも、近大の先輩でもある馬場からの頼みは無下にできない。
キャッチャー装備でやってきた佐藤
奈良・生駒の練習場に、馬場を含めた仁川学院高の関係者らと一緒に佐藤がやって来たのは翌6月。雨のため室内練習場での視察となったが、田中はそこで、何度となくうならされることになる。
佐藤は、プロテクターとレガース、マスクの“捕手フル装備”を持参していた。二塁送球を計測すると、田中のストップウオッチは1秒8台を連発した。
捕球から二塁送球、これを二塁ベース上の野手がキャッチするまでの一連の動作を「ポップアップ」と呼ぶが、プロでも2秒を切れば強肩の部類に入る。その「2秒の壁」を、目の前の無名の選手が、いとも簡単に破っている。
「そこそこ、放りよるな」と思いながらも、どこかしら信じられず、傍らにいたコーチの松丸文政(現近大監督)に確かめると「はい、監督、1秒8台です」
しかし、その強肩ぶり以上に、田中に衝撃をもたらしたのが「打撃」だった。
1スイングで「これは絶対プロ」
「もちろんスイングスピードの速さ、そして柔らかさ。ワンスイング見て、もう、これは絶対プロやと思ったんです。上宮時代にもバッターをプロに送っているし、野手って、分かるんですよ。絶対プロ、僕は思いました。自分の直観でね」
室内でのフリー打撃。
田中は、佐藤の“1スイング目”で「これは絶対プロ」と確信したのだという。

