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甲子園の風BACK NUMBER
「あのとき、せめてコーラを飲んでおけば」松坂大輔がいま明かす甲子園伝説の死闘「横浜vsPL学園 」250球の真相「僕がダメだった一番の理由は…」
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/08/14 11:07
夏の甲子園伝説の死闘「横浜vsPL学園」延長17回250球の真相について、松坂大輔が明かした
2回、5番の大西(宏明)にカーブをセンター前へ打たれて、その後、1点を取られたのは(8番のピッチャー、稲田学が打ったセンターへの)犠牲フライです。久しぶりに取られた1点(25回連続無失点でストップ)でしたが、あの回は送りバントを僕がセーフにしたり(フィルダースチョイス)、ボークもあって、自分から崩れた感じでした。さらに9番バッター(松丸文政)と1番の(田中)一徳にタイムリーを打たれて2点目、3点目......。
そういえばあの回、(PLの平石)洋介の声についての報道が出ていましたよね。 僕の球種を読んで、三塁ベースコーチの洋介がまっすぐなら「行け行け」、変化球なら 「狙え狙え」って叫ぶんでしたっけ。球種を読まれていたのは僕のクセなのか、良男の構えだったのか......いろんな話を聞かされましたが、どれが本当なんだろう。洋介は僕にクセはなかったと言ってました。僕としては、洋介が声を出してる、もしクセが出ているなら対応しなくちゃいけないという順番で考えたんですが、でもクセの対策はしてきましたから、クセじゃないだろうとは思っていました。僕の場合、クセが出るとしたら変化球です。振りかぶるとき、変化球だとヒジとヒジの間が開くんです。 そのほうがスライダーが投げやすいというのが理由です。ただ、そこは意識して修正してきましたから、クセが出ているとは思えませんでした。
僕がダメだった一番の理由は…
すると試合中、山野井(成仁)と柴(武志)が、良男の構えからストレートと変化球の見分けがついているんじゃないか、みたいなことを言ってきました。実際はどうだったのかな......もしかしたら何もなかったのに、何かをやってると気にさせることで僕を崩そうとしていたのかもしれません。後になってPLの選手からホントはこう だった、みたいな話を聞かされた気もしますが、僕にとっては、ああ、そうか、くらいの話なんです。もう終わったことですからね。要は、僕の調子が悪すぎたというだけの話です。これもPLの選手に言うんですが、「クセなんか関係ない、調子さえまともだったら打たれっこない」って。あの日、僕がダメだった一番の理由は、朝が早かったから。それだけです(笑)。
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