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「学力最下位のヤンキー校」から激変…“甲子園から消えた名門公立校”沖縄水産に復活の兆し「文武両道で何が悪い。バカにするな」熱血監督たちの挑戦
posted2025/08/06 11:08
沖縄水産野球部元監督の新垣隆夫。荒廃していた同校の立て直しに尽力した
text by

松永多佳倫Takarin Matsunaga
photograph by
Takarin Matsunaga
「文武両道で何が悪い。バカにするな」熱血教師の思い
2013年に新垣隆夫が名門・沖縄水産野球部の監督に就任したとき、校内は荒廃し、生徒と指導者の信頼関係は崩壊していた。新垣が述懐する。
「選手からすれば、好き勝手にやらせてくれる前監督を追い出した張本人として見られ、相当距離がありました。選手たちには内情を言えないため我慢、我慢の連続でした。あの当時の沖縄水産は名前だけがブランド化して、実態はまるで別物になっていましたから。
僕が掲げたのは、“凡事徹底”と“文武両道”。他の教員にも笑われました。でも、沖縄水産で“文武両道”で何が悪いのか。バカにするなと思いました。そういう大人のバカにした見方が、子どもたちをダメにするんです。選手たちには『周りの大人はどう言っても気にするな。沖水が勝てなくなったと言いたい奴に言わしとけ。看板は一回下ろそう。責任はすべて俺が取る。お前たちが背負う必要は何もないから、お前たちの野球を作り上げていけばいい』と言いました」
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大胆な改革を行わなければ、復活など程遠い。新垣はどう思われようと自分の信じる道を断行した。エースだろうと4番だろうと評定値が悪ければメンバーには入れない。全教員に聞きに回り、授業態度が悪ければ練習にも参加させない。物事には順番がある。授業でしっかり勉強することが先決だという意識を徹底させ、「野球をやりたい」という飢餓感を体感させた。
保護者には毎月、練習の参加率、学期末の成績などを掲載した“部活便り”を発行し、実情を知らせた。当初は反発を受けたが、筋を通して話すことで次第に理解が広がり、就任翌年ごろから選手たちは新垣のほうを向き始めた。

