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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
前田健太〈ヤンキースとマイナー契約〉決断までの舞台裏「自分自身に不安を抱いている」苦しんだメジャー10年目「落とし穴になった“ある球種”」
text by

山田結軌Yuki Yamada
photograph byYuki Yamada
posted2025/08/06 12:00
新天地に挑む前田健太の思いとは…
「自分自身に不安を抱いている」
前田本人はこう話していた。
「不安はもちろんありますね。打たれる、打たれないという不安じゃなくて、しっかり投げられていない不安です。自分自身に不安を抱いている。あまり相手と戦うような気持ちにはなれなかった」
マイナー戦で3先発を終えた時点で防御率24.30という悪夢。崩れた投球フォームを修正することばかりを気にして、打者を抑えることに集中できる状態ではなかった。直球(フォーシーム)をコントロールし、ストライクゾーンに投げられる自信がない。スライダーやチェンジアップでとにかくストライクゾーンに投げることで精いっぱいだった。マウンドに上がっても「打ち損じてくれ」と願うしかできなかった。
ある球種が“落とし穴”に…
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「フォーシームだけ自分の中でしっくりきてなくて、そこの修正をどうするかで二転三転した。腕を下げた方がいいんじゃないか、とか」
前田はこれまで“感覚派”で過ごしてきた。イメージした動きは、深く考えずともすぐに体現することができた。しかし、37歳になった今シーズン、自身が思い描く動きや投球フォームと、実際の動きに大きなギャップが生じていた。そしてある球種が“落とし穴”になっていた。
開幕後は、被打率の低いスイーパーの投球を増やした。タイガース首脳陣からの指示でもあった。2024年のスイーパーの被打率は.226、2023年は同.206で前田にとって、ウイニングショットのチェンジアップと並び、頼れる球種だったことは間違いない。
“伝染”していた「横ぶり」の意識
しかし、打者を封じられるはずのスイーパーが不調の原因になってしまった。横変化の大きなスイーパーの多投は「横に大きく曲げよう」という意識で自然と体や腕を横に振ってしまう。他の球種を投じるときも体の「横ぶり」が“伝染”していた。直球を投じる際に体が「横ぶり」になると指先に十分な力が伝わらず、カットボールのように変化する。それが悪い癖となり、球速の低下にもつながった。

