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「オレがウシを獲ってくれと言ったんだ」“あの大投手”のまさかの指名…空前のトレードでロッテ入り牛島和彦に「お前なんかやらかしたのか?」
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赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/05 11:12
大トレードのロッテ入団会見。左から平沼定晴、上川誠二、有藤道世監督、松井静郎球団社長、牛島、桑田茂。どこか表情が硬いのは否めない?
その時は、正直、何言うてんねん、この人、と思いましたけど、本気やったんやと、ロッテに行ってみて、初めてわかりました。
村田さんが先発した試合は、ほとんど抑えに成功しています。14回か15回、登板する機会があって、失敗したのは1回だけ。同点に追いつかれて村田さんの勝ちを消してしまいました」
2年連続最多セーブの活躍
牛島は移籍1年目の87年に24セーブ(2勝4敗、防御率1.29)、2年目の88年に25セーブ(1勝6敗、防御率4.47)をマークし、2年連続最多セーブを記録した。
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当時、一番苦労したのは、いつもスタンドがガラガラだった本拠地・川崎球場でいかに自分の気持ちを盛り上げるか、だった。
「中日のナゴヤ球場で、『ピッチャー、小松に代わりまして牛島』ってアナウンスが流れたら、3万人以上のお客さんがワーッ! と沸くじゃないですか。それだけでもう勝手に興奮状態が作られちゃうんですよ。よし、行くぞ! という気分になれる。
それに比べて、川崎はいつも観衆500人、1000人の世界でしょう。『ピッチャー、村田に代わりまして牛島』ってアナウンスされても、拍手はパラパラパラパラ。
試合前、あまりにお客さんが少ないから、球団の営業に聞いたことがありましたもん。午後5時半ごろ、ナイターの始まる30分前に『開門してるんですか』って。そうしたら『1時間半前、4時に開門してます』って(笑)。
見ていなくても試合展開がわかる
だから、ナゴヤ球場の興奮状態をいかにして川崎でも作るか。常にそういうメンタル面での工夫をしていましたね。それだけお客さんが少ないと、逆に歓声を聞くだけで、試合展開がわかるんです。トレーナー室でマッサージしてもらいながら、あ、今のはツーベースやな、これはホームランやな、ああ、追い上げてんな、逆転しそうやな、よし、勝ち越した! となれば僕の出番だから、そこで気持ちのスイッチが入るように訓練していました」

