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「オレがウシを獲ってくれと言ったんだ」“あの大投手”のまさかの指名…空前のトレードでロッテ入り牛島和彦に「お前なんかやらかしたのか?」
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赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/05 11:12
大トレードのロッテ入団会見。左から平沼定晴、上川誠二、有藤道世監督、松井静郎球団社長、牛島、桑田茂。どこか表情が硬いのは否めない?
88年には伝説の「10.19」、近鉄とのダブルヘッダー第1試合に登板している。近鉄が逆転優勝するには2連勝が条件。どちらか引き分けでも西武の優勝が決まる状況で、3-3で迎えた9回2死二塁、仰木彬監督が梨田昌孝を代打に送ると、牛島は敬遠を避けて勝負を選択した。
「あの時は、試合前のミーティングで、ここで俺たちはどう戦うべきかという話をしていました。『勝てば近鉄ファンに怒られる、負ければ西武ファンに恨まれる、どっちに転んでもいいことないなあ』と。でも、『それなら俺たちの力を出し切るのが一番だ』と全員の気持ちが一致したんです。それがフェアプレーだと。
第2試合まで盛り上がったのは俺のおかげだろう(笑)
僕が登板した場面、ロッテが勝つには、梨田さんを敬遠するのがベストでした。ツーアウトで一塁が空いてるんですから。
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でも、梨田さんはあの時、引退すると報じられていた。つまり、第1試合の代打は現役最後の打席になる可能性もある。だから、敬遠するぐらいなら勝負しよう。アウトになっても梨田さんならいい勝負だったと思ってくれるやろう、と思ったんです。ベンチも同じ考えだったのか、何のサインも出ていなかった。
それまでインサイドを見せ球にして外を勝負球にしていましたけど、梨田さんは読んでるはず。そこで、あの場面は逆に、外を見せ球にしてインサイドで勝負にいった。そうしたら、梨田さんがシュートボールに詰まって、よし、打ち取った! と思ったら、センター前にポトンと落ちたんですよね。
あの梨田さんの一打で近鉄が勝ち、優勝は第2試合に持ち越しとなった。ロッテの営業は大喜びしてましたよ。『テレビ中継が決まりました! 中継権料が入ってきます!』って。だったら、そこから俺にギャラを払ってくれよ。第1試合の負け投手なんやから、俺のおかげやろうって(笑)」
こうしてプロ10年目を迎えた89年、牛島は先発に転向する。
〈第4回につづく〉

