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「ジャーメイン抜きの優勝はあり得なかったが」“遅咲き30歳FW”はW杯に行けるか…トルシエがE-1をズバリ総括「中国にはない日本の保証だ」
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田村修一Shuichi Tamura
photograph byVCG/Getty Images
posted2025/07/23 17:22
E-1得点王とMVPに輝いたジャーメイン良。30歳にして日本代表で結果を残したストライカーに次のチャンスは来るか
「齢を重ねた国内の選手たちであり、より高いレベルで存在感を示したい選手たちだ。彼らの思いは実を結んだ」
――それでは大会自体のレベル、東アジアのサッカーについてはどんな印象を持ちましたか?
「東南アジアも含めた東アジアのレベルは――例えばインドネシアが推進する帰化政策のように――新たなルーツを導入することでレベルアップを遂げている。日本もそうだがベトナムやマレーシアも、起源をベトナム人やマレーシア人に持つ選手を招き入れることで、チームのレベルを上げている。協会は政策を方向転換し、帰化選手を積極的に導入することで、サッカーのレベルを劇的に向上することに成功した。
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ただ、国内リーグに関しては、タイを除きレベルがアップしたとは言えない。国外に選手を求めて代表のレベルアップを図ることが、よりレベルの高いリーグを作り上げるための契機になっている。そんな風にして東南アジアは進化しようとしている」
――では東アジアはどうでしょうか。日本と韓国は安定していますが、中国はしばらく前から停滞しています。
「中国の停滞は、彼らが政策として二重国籍の選手の帰化を考えていないことによるところが大きい。中国は国策として、国内リーグに所属する大物外国人の帰化を推進し、国外の中国起源の選手たちを代表に取り込もうとはしなかった。その中国独自のエコシステムにより、帰化政策がうまく機能していない。そして今、レベルの高い外国人選手は軒並み中国を離れて、国内リーグのレベルが急激に下がってしまった。そのダメージを抑えられなかったのは、中国には本当のサッカー文化が存在していないからだった。だからあれだけの人口と経済力を誇りながら、中国サッカーは進化することができない。より具体的にいえば、海外でプレーする二重国籍の選手の帰化を中国が認めないからだ」
日本は多くが海外移籍…レベルの違いの要因だ
――日本は逆で、帰化選手に頼る時代は終わりを告げ、ジャーメインにしろ望月にしろ日本生まれの日本育ちです。そして多くの選手がヨーロッパに移籍してプレーしています。
「レベルの違いを生み出しているもうひとつの要因は、日本は選手の多くが海外に移籍していることだ。日本には二重国籍の選手は少ない。だがその分とても多くの選手が海外でプレーしている。それはブラジルやアルゼンチンと同じで、代表の主力を構成するのはヨーロッパでプレーする選手たちだ。
中国は違う。二重国籍の選手も、国外でプレーする選手もほとんどいない。国外でプレーする選手の少なさは、インドネシアやベトナム、タイなども、多かれ少なかれ変わらない。それでも代表を効率よく強化したければ、二重国籍の選手の導入は不可欠だ。東南アジア諸国は、インドネシアやマレーシアがそうであるように、代表の進化のために二重国籍選手の帰化を、積極的に推進する政策に転換した。今はベトナムも追従しようとしている。それこそが中国にはない、東南アジアの現実だ」
――たしかにそうですね。メルシー、フィリップ。〈第1回からつづく〉

