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阪神OBが語る“契約更改”舞台ウラ「この金額でハンコを押せません」「5~6度も…200万円アップした選手も」…恒例の“お家騒動”2大原因もズバリ
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江本孟紀Takenori Emoto
photograph byJIJI PRESS
posted2025/07/21 06:02
阪神時代の江本孟紀。活躍したシーズンの契約更改が強く印象に残っているという
「江本君、君は知らないだろうが、いまのウチには1000万円以上もらっているピッチャーはいないんや。だから、ほかのピッチャーより多く勝っているからって、パ・リーグから来た君の年俸をドカンと吊り上げるわけにはいかん」
明らかにパ・リーグを軽視した発言だった。当時から「人気のセ、実力のパ」といわれていたものだが、「V9(1965~1973年の9年連続日本一)を達成した巨人、そして毎年のように2位に終わっている阪神のほうがパ・リーグより強いんや」という上から目線の意識を強く感じた言葉だった。だからというわけではないが、私はここで観念した。これ以上粘ったところで10万、20万円程度のアップはあるかもしれないが、そこまでせこくなって金額を吊り上げるつもりはなかった。
足しげく球団事務所に…200万円アップの選手が
しかし、このあと衝撃の事実が発覚する。
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ある生え抜きの中堅選手が、上層部のこうした手口を知っていたこともあり、5度、6度と足しげく球団事務所で交渉を重ね、トータル200万円以上アップさせたという話を耳にした。微増、微増を積み重ねていった末の結果である。
「本当に、そんなことをやるヤツがおるんやな」
私はただただ苦笑いするしかなかったが、同時に「阪神で年俸を上げるのは簡単なことではないな」と身に染みて実感したことを、いまでもはっきり覚えている。
「お家騒動」原因の1つ目は“早々の監督続投宣言”
阪神が低迷するたびに起きている「お家騒動」。阪神のお家芸などといわれ、もはや伝統芸能の域に達した感があるが、監督が交代するときには一事が万事、大騒動に発展していくことが多い。ここ15年くらいでいえば、岡田から真弓に代わった2008年、真弓から和田に代わった2011年、金本から矢野に代わった2018年、矢野から岡田に代わった2022年あたりは監督人事で風雲急を告げていた。
12球団のなかでも、とくに阪神は熱烈なファンが多いがために、「監督が代わること」が、わが身に起きた不幸とばかりに受け止める者も少なくない。球団、そして阪神電鉄本社内では、監督の交代は「よくある人事のひとつ」だと捉えていても、ファンは「いったい、タイガースはこの先、どうなってしまうんや!?」などと悲観的に捉えられるために、結果的に「お家騒動」などといわれてしまう一面があるのも事実だ。
つまり、ファンが静観していれば、「そこまで騒ぐほどのことか」と思えてしまうケースだって過去にはあったはずだ。
とはいえ、阪神の監督が契約期間を残して退任するケースが相次いでいるのも事実だ。
その根本となる原因は、どこにあるのか? 答えは二つある。

