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「監督に適してないんじゃ」阪神電撃トレードで見た天才型・吉田義男vs思考派・野村克也、指揮官として決定的な差とは…江本孟紀がズバリ 

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江本孟紀

江本孟紀Takenori Emoto

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posted2025/07/20 11:01

「監督に適してないんじゃ」阪神電撃トレードで見た天才型・吉田義男vs思考派・野村克也、指揮官として決定的な差とは…江本孟紀がズバリ<Number Web> photograph by Kyodo News

南海から阪神に移籍した江本孟紀。リーグが変わって驚いたこととは

 吉田さんは「牛若丸」と呼ばれる華麗な守備を披露する一方、打撃でも17年の現役生活で1864本のヒットを放ち、350もの盗塁を決めて2度の盗塁王に輝いた。

 こうしたプレーが可能だったのは吉田さんが天才だったからである。何も考えなくても体が勝手に反応してくれる。だからこそ、吉田さんはプレイヤーとして優秀だったわけだが、同時に「ユニホームを着ている選手全員が自分と同じようにプレーできる」と考えてしまった面は間違いなくある。それが吉田さんにとっては最大の悲劇となってしまった。

野村さんを見たからこそ…監督に向いてないのでは

 それでは、南海時代の野村さんはどうだったのか。野村さんもこと打撃において「飛ばす」ということでは間違いなく天才だった。そうでなければ、王貞治さんの868本に次ぐ652本塁打を打つことなど不可能だからだ。

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 しかし、野村さんは「もっと野球がうまくなりたい。そのためには、どうすればいいのか」ということを、つねに考えていた。現状に満足することなく、飽くなき向上心があったからこそ、野村さんは選手兼任監督を任され、一定以上の成績を収めることができたのだ。

 私も野村さんが標榜したシンキング・ベースボールについては4年間、じっくり学ばせてもらった。同時に「監督とはこうでなければならない」という理想像も持つようになった。その点を教えてくれた野村さんには本当に感謝している。

 だが、残念ながら吉田さんには野村さんのような考えは見られなかった。

 相手チームが勝ったときに、「なぜ昨日は負けてしまったのか」まで詳細に分析するようなことはせず、「選手がよく打って、しっかり守ったから相手が勝ったんだ」と思い込むようなところがあった。この違いこそが監督として思うような成績を残せなかった所以であったのは間違いないが、同時に「吉田さんは監督には適していないんじゃないか」と不信感を抱いたのもまた事実なのであった。

阪神移籍後「パの方がレベルが高い」と思ったワケ

 私が阪神に入団した1976年は、とにかくチームが強かった。単純なサインで勝てるのだから当然といえば当然のことだが、私が実際にセ・リーグの打者と対戦して感じたのは、「パ・リーグのほうがレベルは高い」ということだ。

【次ページ】 江夏を超える15勝を挙げて優勝争いに加わったが

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