甲子園の風BACK NUMBER
「月曜完全オフ」「ゆで卵を数時間ごとにモグモグ」公立進学校野球部は“私立優位”にどう立ち向かうか「1人で使える時間こそ…」静岡高校のケース
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間淳Jun Aida
photograph byJun Aida
posted2025/07/13 06:02
静岡高校の池田監督は名門公立校をどのようにして強くしようとしているのか
「学校での奉仕活動や委員会活動、苦手な教科への取り組み方など、おもしろくないことに対する姿勢に人間の本質が出ます。それは、野球で上手くいかない時や劣勢に立たされた時に、どんな行動をする選手なのかを判断する重要な材料となります。勝負強い選手ほど、そのような状況で自分を見失うことがありません」
「書は人なり」と言われるように、野球日誌にも人間性が表れるという。池田監督は毎日1時間半かけて2、3年生の野球日誌に目を通す。調子が良い時と悪い時で分量や内容が大きく変わる選手もいれば、調子が良くない時こそ深く考えて丁寧に書く選手もいる。指揮官は「文字や文章から選手の性格や内面を知ることができます。個性を生かすために、どんな伝え方をすれば良いのか、日々の野球日誌にもヒントが詰まっていますね」と話す。
野球に特化した私立の強豪校は全体練習に時間をかけたり、1学年20~30人の選手たちによってチーム内競争を活発にしたりして、戦力を底上げしていく。しかし、静岡高校が同じやり方でチーム強化するのは現実的ではなく、スタイルにも合っていない。
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「個を生かしたチームづくり」
公立の進学校だからこその方法がある。
負けたら…というネガティブな感情はありません
静岡高校は4年ぶりの甲子園を目指し、13日に静岡東との初戦を迎える。甲子園出場を“ノルマ”とする名門校の宿命を受け入れ、池田監督は指揮を執る。
「昨夏は公立の掛西が甲子園に出場して静岡県内が盛り上がりました。同じ公立の伝統校としてうれしくもあり、悔しい思いもありました。皆さんに静高の監督にかかる重圧を心配されますが、負けたら周りから批判されるというようなネガティブな感情はありません。いよいよ始まるワクワク感でいっぱいです」
高校野球界では私立校が勢いを増しており、静岡県も例外ではない。だが、公立を完全に飲み込むのは簡単ではないだろう。独自の哲学や個を尊重した育成を貫く“公立の雄”静岡高校が、私立の波に抗う。〈第1回からつづく〉

