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偏差値70で甲子園春夏43回出場…名門公立校でも選手集めに四苦八苦「県内トップ層が県外常連校に流出」「打開策は“進学実績”」静岡高のいま

posted2025/07/13 06:00

 
偏差値70で甲子園春夏43回出場…名門公立校でも選手集めに四苦八苦「県内トップ層が県外常連校に流出」「打開策は“進学実績”」静岡高のいま<Number Web> photograph by Kyodo News

2021年夏の甲子園での静岡高校。名門公立校はこの大会以来、夏の大舞台からは遠ざかっている

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間淳

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文武両道の名門公立校で、偏差値「70」の静岡高校。夏の甲子園出場回数は県内ナンバーワンの26回、全国制覇1回の輝かしい実績を持つ一方で、現在は県内各校の突き上げにあっているようだ。そんな“名門校”が苦悩する今を追う。〈NumberWebレポート、敬称略/全3回。第2回につづく〉

全国優勝をしないと…でもそれでいいと思う

 3年は長いのか、短いのか。置かれた立場によって捉え方は変わる。「たった3年」ではなく、「もう3年」と周囲から声が聞こえるのは、名門校の宿命でもある。

 静岡県立静岡高校は、県内で断トツとなる春夏通算43回の甲子園出場を誇る。夏の選手権では優勝1回、準優勝2回。「静高」の愛称は、全国の高校野球界で親しまれている。

 静岡高校が県内の高校野球をけん引しているのは、今も変わらない。ただ、夏の甲子園出場は2021年が最後で、勝利は2003年から遠ざかっている。

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「3大会前の甲子園出場」

 この実績は、静岡高校では評価されない厳しさがある。静岡高校OBで、2021年4月からチームを指揮する池田新之介監督が語る。

「数年でも甲子園に行けていなければ、周りからは長い期間行けていないという見方をされます。甲子園出場は当たり前だと思われているので、部訓としている全国優勝をしないと認められません。でも、それで良いと思います。それが、静高ですから」

 選手が毎年入れ替わり、一発勝負のトーナメントで勝ち続けるのは簡単ではない。それでも、静高には甲子園出場が“前提条件”であり、“最低ライン”として突きつけられる。

私立優位…公立校が直面する「選手集め」問題

 高校野球界は今、「私立優位」の時代を迎えている。勢いは今後、加速していくと予想される。公立の伝統校が多い静岡県でも、構図が変化している。昨夏は県立掛川西高校が26年ぶりに甲子園出場を果たしたが、私立が次々と台頭している。

 1990年代は公立8校、私立2校だった夏の甲子園代表校の割合が、2000年代は半々となり、2010年以降は公立6校、私立8校と逆転した。公立6校の内訳は昨年の掛川西を除けば、全てが静岡高校となっている。

 私立は今春のセンバツに出場した常葉大菊川や報徳学園を率いていた名将・永田裕治監督が指揮する日大三島をはじめ、浜松開誠館、聖隷クリストファー、加藤学園といった“新興勢力”も上位進出の常連となっている。

 直近の公式戦となる春季大会では県大会ベスト4に残った公立高校は磐田南の1校だけ。春のセンバツにつながる昨秋の県大会でもベスト4は私立が独占した。

「他の地域と同じように、静岡県も強い私立が増えていると感じています」

 池田監督も、私立の存在感が増している状況を肌で感じている。

 私立が強くなっている最大の要因は「選手集め」にある。

【次ページ】 “県外流出”を防ぐために「進学実績」も重要なワケ

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