甲子園の風BACK NUMBER
“偏差値70の甲子園常連校”は「進学実績も重要」「中学生も保護者も高校野球後を気にしている」野球脳を鍛えつつ…どう球児集めをしているか
posted2025/07/13 06:01

2018年センバツでの静岡高校
text by

間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
進学も希望が叶うと思えば入学してきます
静岡高校は甲子園で春夏通算43回の出場を誇る公立校の雄だが――ここ3年は夏の甲子園出場から遠ざかっている。課題の1つといえるのが「選手集め」である。第1回でも記した通り、静岡県には「学校裁量枠」という独自の制度がある。その一方で強豪私立に入学する有望選手は多い。
さらに頭を悩ませているのは“静岡県外の甲子園常連校”を進路に選ぶ、つまり“県外流出”が起きている。
例えば2023年にセンバツで優勝した際の主将だった山梨学院の進藤天や、2023年夏の甲子園に主将として出場した健大高崎の森田光希は、静岡県外の私立強豪に進学した象徴とも言える。
ADVERTISEMENT
では、有望選手の県外流出を止め、さらに静岡高校が選択肢の最上位となるには、どうすれば良いのか。池田新之介監督は2つの要素を上げる。
それは「甲子園で勝てるチームづくり」と「進学実績」だという。
「静高を含めて、静岡県内の高校に魅力があれば、選手は県外に出ていきません。静高に入れば甲子園で活躍できて、進学も希望が叶うと思えば入学してきます。静高はフロントランナーであり続けなければならないと考えています」
言われたことを100%こなすのは素晴らしいです。でも…
甲子園で勝てるチームづくりには、高校全体が伝統とする「自主自立」が根底にある。校訓の「卬高(高きを仰ぐ)」には、実践目標の1つに「自主的に行動する」と記されている。これが静高のスタンダードであり、池田監督はグラウンドでも方針を貫く。
「学校生活と部活動の方針が異なれば、選手たちは戸惑ってしまいます。指導者が何でも指示し、型にはめてしまうと自立心は伸びません。指導者に言われたことをやる方が楽かもしれませんが、選手が考えて自ら動く静高の伝統を継続しています」
池田監督は、自立心が勝負所の差に表れると考えている。指導者は練習や試合前であれば、選手に指示やアドバイスができる。しかし、試合中の瞬間的な判断や選択は選手自身に任せるしかなく、指導者が直接は関われない。池田監督は言う。