プロ野球PRESSBACK NUMBER
直前で消えた「3対3電撃トレード」独占スクープ…阪神が坪井智哉を放出のウラで「まさか下柳剛を獲れるとは」23年前の“事件”…阪神元編成部長が語る真相
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byKYODO
posted2025/07/08 11:02
2002年11月、日本ハムから阪神に移籍した下柳剛(左)と中村豊。別日に阪神から日本ハムへ移籍した坪井智哉らを含む“3対3トレード”となった
「ちょうど、坪井(智哉)が相談にきていたんですよね。FAで金本知憲を取れそうだったから、自分の出番が減ると考えたみたいです。トレードの話をしたら、『もしできるのならよろしくお願いします』と。(新人の年から2年連続3割を打った)生え抜きのスターではあったけど、左足を骨折して出場機会も減っていましたからね」
FAでの獲得に成功すれば、レフトは金本が守る。センターは2年連続盗塁王の赤星憲広が確定的で、ライトは後半戦に4番を任された濱中治に加え、FA行使検討中の桧山進次郎もいた。坪井と黒田の意思が一致した。
数日後、交渉がまとまった。その矢先、予期せぬ事件が起こる。日本ハムの大宮・育成部ディレクターから「このトレード、ひょっとしたら1紙にスッパ抜かれるかもしれません」と連絡が入った。
消えた“独占スクープ”
ADVERTISEMENT
「あるスポーツ紙の記者のいとこが日本ハムで働いていたの。その人が窓際の席で、大宮の電話を盗み聞きしていたんちゃうかと。ちょうど、阪神が岡山で秋季キャンプをしていたので、星野さんに『番記者を集める時、1紙だけ入れないで、残りの5紙にトレードの情報を言ってください』と電話でお願いしました」
11月11日付のスポーツ紙を見ると、1紙は『スクープ』と銘打って1面で報じている。だが、他紙も伝えており、“特ダネ”は黒田の早技によって消滅した。紙面には〈10日までに明らかになった〉などと綴られ、星野監督が記者陣に伝えた様子は描かれていない。
「1紙だけに抜かれると、破談になりがちなんですよ。昔、門田(博光)と掛布(雅之)のトレードがスポニチに出たでしょ。あの時、僕も『ひょっとしたらお前もついていくで』と球団に言われてましたから」

