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「セルフ戦力外」呼ばわりも木村昇吾はFA→西武移籍に「一切後悔はない」…大谷翔平の160km撃ちで味方から「何ヒット打ってんすか!」もいい思い出
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二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShiro Miyake
posted2025/06/25 11:08
海外FA権を行使するも、手を挙げる球団はあらわれず。しかし木村に後悔はなかったという
世界最高峰とされるのが「インディアン・プレミアリーグ」(IPL)。ここでプレーするイメージを頭に叩き込む意味もあって、今年3月インドに赴いた。約1カ月にわたって現地のチームで、同じようにIPLでプレーすることを目標に抱く若者たちと一緒に汗を流した。
「お金がなくて毎日同じTシャツを着ている選手がたくさんいる。裸足の子、サンダルの子、ボロボロのスパイクを履いている子……でもみんなキラキラしている。このクリケットでのし上がってやろうってギラギラしている。
正直、自分が恥ずかしいなって思いました。この子たちのようにどれだけの思いを持って、クリケットに取り組んでいるのか、と。10億円プレーヤーを目指すと言っているけど、口だけか、と。薄々、そんな自分になっているんじゃないかって気づいてはいました。
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ベイスターズ時代に二軍でバット引きをやった話をしましたけど、今の状況を生み出しているのは間違いなく自分なんです。なりたい自分のために、河野(友軌)と居残りでずっとやっていた守備練習みたいなことをやっているかと言われたら、やっていないんです。インドに行ってみて、ああ、今のままじゃダメだって思いました」
もう一度、なりたい自分に向かうならやるしかない
IPLを目指すなら、インドでクリケットをやったほうがいい——。木村は一念発起し、今年9月から単身で再度インドに渡って、プレーできるチームを探すという。
トレードが自分の人生を変えたように、頑張っていれば誰かが見てくれているかもしれない。誰かがチャンスを与えてくれるかもしれない。くすぶった現状を打破できるかもしれない。
「守備だって走塁だって、自分の武器にしようとそのときは必死でやっているだけで、どうつながるかなんか思っていない。でも必死にやっていたから、つながった。年齢なんて関係ないですよ。今それができていないなら、なりたい自分に向かいたいなら、やるしか道は残されていないんです」
45歳、なりたい自分を追い掛けて。その目は今なおキラキラと、ギラギラとしている。
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