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「セルフ戦力外」呼ばわりも木村昇吾はFA→西武移籍に「一切後悔はない」…大谷翔平の160km撃ちで味方から「何ヒット打ってんすか!」もいい思い出
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShiro Miyake
posted2025/06/25 11:08
海外FA権を行使するも、手を挙げる球団はあらわれず。しかし木村に後悔はなかったという
西武時代の思い出の一つに、大谷翔平との対戦がある。
5月8日、北海道日本ハムファイターズ戦。大谷は前年度、最多勝、最高勝率、最優秀防御率の投手3冠に輝いており、日本球界を代表するエースに成長していた。2番サードに入った木村は初球、160kmの直球をバチンとセンター前にはじき返した。
160kmをはじき返したら……
「スタンドも信じられなかったのか、打った瞬間じゃなくてだいぶ遅れて“オーッ”みたいなどよめきが起こって。でもムカついたのがクリ(栗山巧)なんです。『初見で何打ってんすか、大谷くん本気になるでしょ』と言ってきて、僕も『なんでヒット打って、そんなこと言われなアカンねん』って返したんですよ」
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続く2打席目はまた初球を打ってセカンドゴロに倒れたが、ベンチに帰るとまたしても怪訝な表情を浮かべる栗山が待っていた。
「160kmの真っ直ぐがちょっと垂れて、芯の一つ下に当たってアウトになったんです。栗山が『いやいや160kmは落ちません。普通はバットの上っ面に当たって、後ろに飛んでファウル。それを何、下当ててんすか。ピッチャーからしたら屈辱ですよ』と」
結局その栗山も大谷から2安打を放っているのだが、栗山からの理不尽なクレームもセットになって記憶が鮮明に残っているという。
栗山からのひと言
パ・リーグにも慣れてきて、これからというタイミングで右ひざ前十字靭帯断裂の大ケガで戦線を離脱してしまう。戦力外通告を受け、育成契約に切り替わった。
さほどショックはなかった。崖っぷちに変わりはないからだ。
その年のオフ、室内練習場でトレーニングしているときに、栗山が近づいてきて大谷との対戦の話を持ち出してきたという。


