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「ドラフト指名90人中88番目」でプロ入り…横浜でくすぶっていた木村昇吾がトレードで転機をつかむまで「持病で食べられず…1回の食事に2時間」
posted2025/06/25 11:05
横浜入団会見での木村昇吾と、45歳になった現在の木村。実は若いころに食事がとりづらい持病で体力をつけられなかったという
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
JIJI PRESS(L)/Shiro Miyake(R)
腹立たしくて、自分にむかついて。
こんなはずじゃなかったと環境のせいにする暇があるなら、と怒りの矛先を己に向けて日が暮れるまで練習に打ち込んだ。クビが迫っているなら、後悔しないくらい野球をやり切ろうと胸に叩き込んだ。
トレードをきっかけにプロ野球人生が好転した一人に、45歳になった現在はクリケットで活躍する木村昇吾がいる。
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横浜ベイスターズで5年間、シーズンの大半を二軍で過ごしてきた彼は1対2トレードの「2」のほうで渡った広島東洋カープで「守備固め」と「代走」を取っ掛かりに一軍に定着し、内野も外野もオールOKのチームに欠かせないバイプレーヤーとなっていった。
90人中88番目のドラフト指名
2002年のドラフト会議、走攻守の三拍子そろった内野手と評される愛知学院大の木村は、その年8年ぶりの最下位となったベイスターズから11巡目で指名を受ける。実は、ある球団から4巡目での指名を伝えられていたが、5巡目になっても6巡目になっても自分の名前が呼ばれずに失意に満ちていた。
「横浜の10巡目に享栄の武山信吾くんが入って、信吾が昇吾になったらいいのになと思っていたら、ウエーバー制で横浜は10、11巡目が連続だったのでバッと自分の名前が出てきて驚いたんです」
12球団全90人の指名があったなかでの88番目。キャンプは二軍スタートながら「カンカン打ちまくっていたら」一軍に呼ばれ、そのまま開幕一軍を果たす。
高校の大先輩・伊良部秀輝との対戦
初安打は阪神タイガースとの開幕2戦目。代打で登場して、マウンドには出身高校・尽誠学園の大先輩、伊良部秀輝がいた。試合前には同じく尽誠の先輩、佐伯貴弘と挨拶に出向いた。木村の高校時代に、ニューヨーク・ヤンキースに移籍することになった伊良部が母校を訪れ、サインをくれて『頑張れよ』と声を掛けてもらったエピソードがある。
「伊良部さんの高校のときの映像は、学校でもよく見させられていました。キャッチャーがボンッて捕ってからバッターが振るっていう、僕からしたらマンガの世界。高校に挨拶に来られたときも、でっけえ人やなあ、と。迎えのタクシーが小型で小さいもんだから、横になって乗ってましたから。その話を挨拶のときにしたら、『あんときおったんか』と言ってもらえて。かなり緊張しましたよ」

