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「セルフ戦力外」呼ばわりも木村昇吾はFA→西武移籍に「一切後悔はない」…大谷翔平の160km撃ちで味方から「何ヒット打ってんすか!」もいい思い出
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShiro Miyake
posted2025/06/25 11:08
海外FA権を行使するも、手を挙げる球団はあらわれず。しかし木村に後悔はなかったという
「クリが言うんですよ。『初球を一撃で捉える、速い真っ直ぐをセンター返しするというのがやっぱり野球の基本。あの打球によって僕目覚めました。勉強になりました』って。クリはずっとバッティングのことを考えている。だから2000本安打も達成できたと思うんですよね。
僕も求道者のクリをリスペクトしていましたし、西武には秋山(翔吾)、中村(剛也)、山川(穂高)、浅村(栄斗)、森(友哉)ら凄いバットマンがいっぱいいた。彼らと一緒に野球ができて、本当に良かったなって思います」
自由契約、そして……
翌2017年、一軍での出場はわずか3試合にとどまり、自由契約となる。12球団合同トライアウトに参加したが、手を挙げる球団はあらわれなかった。
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木村と言えば、全力疾走だった。
塁上に残っていれば走ってベンチに戻り、そしてグラブを持ってまた走ってポジションにつく。グラウンド状況の確認、ケガ予防の意味もあるが、気持ちを切り替えるためのアクションでもあった。
「たとえ打てなかったとしても、引きずらないように守備を頑張ろうと次に目を向ける。守備が終わったら、打つぞと切り替える。でもそれだけじゃないんです。親父が少年野球のコーチをずっとやってきて、攻守交替のときは駆け足でとか、全力疾走と教えてきているのに、プロが率先してやらないと子供たちも“別に走らんでええやん”となってしまう。だからそこはしっかりやろうと思っていましたね」
トライアウトでも全力疾走の木村がいた。プロ野球選手としての誇りを胸に、最後まで自分らしくあり続けた。
10億円プレーヤーへの夢はつづく
NPBでプレーする道は断たれたものの、「10億円プレーヤーになる」夢をあきらめたわけではなかった。
知人を介して知ったクリケットの世界に飛び込んだ。世界で熱狂的なファンの多いこの競技は、スポンサー料なども含めて30億円を稼いでいるトッププレーヤーがいるとも聞いた。日本代表としても活躍するようになり、クリケット先進国のオーストラリアやスリランカなどにも武者修行で挑戦してきた。

