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「セルフ戦力外」呼ばわりも木村昇吾はFA→西武移籍に「一切後悔はない」…大谷翔平の160km撃ちで味方から「何ヒット打ってんすか!」もいい思い出
posted2025/06/25 11:08

海外FA権を行使するも、手を挙げる球団はあらわれず。しかし木村に後悔はなかったという
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shiro Miyake
海外FA権を行使しながらも興味を持つ球団はあらわれなかった。
35歳という年齢、かつ半レギュラーという立場。カープは宣言残留を認めていなかったため、「セルフ戦力外」「勘違いFA」とも揶揄された。
一切、後悔はない
木村昇吾は今振り返っても「一切、後悔がない」と言い切る。
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「カープにいたら、これまでと同じように一軍で使ってくれていたと思うんです。でも僕のなかにはずっと“なりたい自分”がいる。内野、外野どこでもいいというんじゃなく、自分が一番好きなショートでレギュラーを張りたい。
35歳、もうそのチャンスが少なくなってきているなかで、他球団から評価を聞けるせっかくの権利を手にしたわけです。人に言われてとか、軽い気持ちとかじゃない。働き先がなくなるリスクも承知で覚悟を持って行使しました」
落合博満が日本人プレーヤー最高となる年俸3億円を手にしたころ、木村はまだ小学生だった。プロ野球で活躍することを目標に置く野球少年は、卒業文集に「10億円プレーヤーになる!」と書き込んだ。周りから笑われても、何とも思わなかった。人は関係ない、自分がどうなりたいか、だ。
なりたい自分になるために
なりたい自分に照らし合わせた行動だとすれば、むしろ勘違いしないためのFAであった。半レギュラーで、ユーティリティープレーヤーで満足しそうになっていた自分を振り払うため。他球団から声が掛からなくとも、これで良かったと思えた。8年在籍したカープに別れを告げた。
2016年シーズン、木村は入団テストを受けた埼玉西武ライオンズの一員となる。年俸は出来高が付くとはいえ、半分近くの2000万円ほどに爆下がりした。だがトレードでカープに渡ったときのように、一からチャレンジできる喜びがあった。野心がたぎる日々に、気持ちも若返った気がした。