情熱のセカンドキャリアBACK NUMBER
西武から戦力外通告→クリケット選手に 40歳木村昇吾の夢は「10億円プレーヤーになる!」
posted2020/11/25 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
秋晴れの河川敷。渡良瀬川の水が気持ち良さそうに流れている。
ゴンッ。
ヤナギの木からつくられたクリケットバットから弾かれた硬いボールは何度も草むらに放り込まれる。赤を基調としたユニフォーム、背番号66。広島カープ時代がどことなくかぶる。
木村昇吾、40歳。
プロ野球選手を辞めてクリケットの世界に飛び込んでから3年が経とうとしている。
「本当は100点取りたかったんですけどね(笑)」
「ワイヴァーンズクリケットクラブ」はこの日、彼の活躍もあってジャパンカップ西関東大会を制した。木村はチームトップの87得点(runs)を叩き出している。コロナ禍でイレギュラーとなった今シーズン最後の公式戦を優勝で締めくくった。
この日のルールは各チーム120球ずつのT20形式が採用され、規定投球数に達するか10アウトで交代になる。木村はコツコツ当てて細かく点数を稼ぎながら、甘い球が来ればバウンダリー(境界線)をノーバウンドでオーバーして得る6点を積み上げていった。
「本当は100点取りたかったんですけどね(笑)。0点が続くと焦ってしまうんですが、1点でも取っておくと逆にボウラー(投手)にプレッシャーを掛けられる。そして甘い球をしっかり打てるようにしておく。クリケットに転向して3年目でようやく手応えというか、こうやればいいんじゃないかっていうのが僕のなかで見えてきています。
今年はスリランカから新型コロナウイルスの影響によってバタバタで日本に帰ってきたり、練習するのも難しい状況だったり、いろいろと大変でした。でもこうやって手応えをつかめたことには“ヨシヨシ”と思っています」
プレーしない間も素振りをしたり、チームメイトと戦術や打ち方の技術について語り合ったり、クリケットに対する情熱の傾け方がハンパないことは理解できる。