「『何？ その打ち方』と笑われても」移籍した広島で30歳のブレイク・木村昇吾が横浜に“恩返し”できたわけ「一軍に残るため…捕手の準備まで」 

守備固めならではの難しさ

　ハードルが一つあったとすれば本職のショートではなく、スコット・シーボルに代わってサードの守備固めで起用されることが多かった点だ。

「ショートは足を使って（バウンドに）合わせて捕る。でもサードはホームベースから近いので、そんな時間なんてないんですよ。だから全然合わなくて、自分の気持ちいいリズムで捕れない。最初は慣れなかったですね」

　ノックもショートで受けてからサードでもこなすように。木村が意識したのは、軽い気持ちで入らないこと。1球目から全集中力を傾けた。

ADVERTISEMENT

「守備固めというものは8回、9回に勝っている場面でしか使われない。そこでもしエラーしたら、自分の存在価値がなくなってしまう。エラーしたら即二軍だという気持ちで、試合と同じシチュエーションを考えてノックを受けていました」

　守備固めと代走でチームの信頼をガッチリとつかみ、カープ2年目も同じ役割を担う。しかし木村はもどかしさを感じていた。走攻守そろった自分を表現したいのに、バッティングのほうが相変わらずサッパリだったからだ。

バッティングフォーム改造で「今までの昇吾じゃない」

新フォームで成果が出始めた2010年の木村　©JIJI PRESS

　球団レジェンドの野村謙二郎が監督に就任した2010年。それは8月の暑い時期だった。野村と内田順三打撃統括コーチの勧めもあって、バッティングフォームの改造に着手する。余計な力が入ってしまう悪癖がどうしても抜けきれないなか、バットを寝かせる新フォームにたどり着いた。

「内田さんに『もう寝かせるしかないですよ』とぼやいたら、『昇吾、それでいけ』と。力が入らないし、うそやんと思いましたよ（笑）。でもきれいにトップまで持っていけるし、リラックスして体も開かない。まさしく自分が理想としていたものでした」

　効果はすぐにあらわれる。

　8月20日からの、本拠地でのベイスターズ3連戦。初戦、代打でヒットを放った。2戦目はケガの東出輝裕に代わってセカンドでスタメン出場を果たすと、二塁打を含む2安打をマークする。3戦目もタイムリーヒットを打ち、「今までの昇吾じゃない」と周囲を驚かせた。

【次ページ】　古巣相手に大暴れで「恩返し」