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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「練習せえへんもんなぁ…」長嶋茂雄“2世”長嶋一茂に《ドラ1指名》ヤクルト元スカウト部長のホンネ評「唯一、オヤジさんに似とったのは…」
text by

安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2025/06/16 11:01
ヤクルトに入団した愛息・一茂を指導する長嶋茂雄。そのポテンシャルの高さは、辛口で有名な辣腕スカウト部長も評価していたという
決して長嶋一茂選手を茶化しているわけではない。片岡さん流の表現で、長嶋一茂選手の稀有な長打力を「絶賛」すると、こういう表現になる。
一茂選手、G.G.佐藤選手の試合前のフリーバッティングを学生当時から目撃してきた者として、二人の打球の軌道は、その通り、圧巻だった。特に、レフト上空に高々と舞い上がり、天中目指してぐんぐん上昇して、その頂点からレフトスタンド上段に落下する弾道には、口を開けて見とれたものだ。
野球が直球だけなら…「1億円プレーヤー」
「野球が“真っすぐだけ”の国、行っとったら1億円プレーヤーや」
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40年近く前の「1億円」だから、今なら3億円プレーヤーぐらいか。このひと言だって、片岡さんの精一杯の「賛辞」だった。
「あれだけ外の変化球が見えてへんのに、2割は打ってたやろ、一茂。あんたら、たった2割かって笑ってるけどな、プロで2割打つって、どんだけしんどいことか知らんやろ」
こういう時の片岡さんは、「白刃」と化す。鳴り物入りで中日ドラゴンズに進んだ片岡宏雄捕手。
中日、国鉄での4年間で放ったヒットはわずか2本。通算打率は1割6分7厘にとどまっていた。
「ストレートを捉える目はしっかりしとったで、一茂は。それだけは、学生時代から一級品やった。もっともなぁ、真っすぐしか待ってなかったんやろけどな、たぶん」
今ほど変化球全盛のプロ野球ではないにしろ、投げ込んでくるボールの4割、5割は「飛び道具」だったはずの1990年前後。
投球の半分しか来ない速球を待って、すべてジャストミートではないにしろ、プロの150キロ近い速球をヒットに持ち込む「集中力」を、片岡さんは人知れず高く評価していたものだ。

