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「練習せえへんもんなぁ…」長嶋茂雄“2世”長嶋一茂に《ドラ1指名》ヤクルト元スカウト部長のホンネ評「唯一、オヤジさんに似とったのは…」
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安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2025/06/16 11:01
ヤクルトに入団した愛息・一茂を指導する長嶋茂雄。そのポテンシャルの高さは、辛口で有名な辣腕スカウト部長も評価していたという
「左ピッチャーなんか、あんた……いつでもストライクがとれる変化球が1つあれば、真っすぐが130(キロ台)後半でも、50%の確率で使える。これが、変化球がもう1つあれば、8割、9割の確率で一軍オッケーや」
放り投げるような言い方で発する「経験則」だから、聞きようによっては思いつきぐらいにしか聞こえないかもしれないが、そんな「ものさし」の中から、担当スカウト当時、ヤクルト初優勝時のリリーフエースだった安田猛(大昭和製紙、1971年6位)に、左腕エースとして85勝を挙げた梶間健一(日本鋼管、76年2位)を獲得。
スカウト部長になってからは、プロ14年4球団で83勝の藤井秀悟(早稲田大、99年2位)に、プロ23年186勝してさらに未だ現役で頑張るレジェンド・石川雅規(青山学院大、01年自由枠)だ。
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「スカウトの目なんか、みんな節穴」みたいな趣旨の書籍を出版し、「これは!と思うヤツなんか、1年でせいぜい4人~5人。あとは、だれ獲ってもおんなじよ」なんてうそぶいてもいたが、話す中味は、いつも真理、本質を突いていたと思う。
唯一「オヤジさんに似とったのは…」
「いっとき守備が……って言われた時期もあったけどな、一茂。強い打球に腰が退けたりしとったからな。手先で捕りにいって。でも、あれや、ジャイアンツ行ったあたりで、だいぶ見れるようになっとったで。それより肩や、スローイング。捕ったらアウト、これはすばらしい。オヤジさんに似とったのは、そこだけや」
「練習せえへんもんなぁ」……何かの話の流れの中で、そんなつぶやきが漏れた。

