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「カマダ~、とトイレで中年サポが手を」「交代時、総立ち拍手」英国ファンが鎌田大地を称えた瞬間…現地観戦で目撃“パレスで愛されるダイチ”
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大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byGetty Images
posted2025/06/15 17:02
クリスタルパレスの鎌田大地。現地での愛され度は?
ボランチはそういうポジションとはいえ、ピッチのあらゆる場所に顔を出す。21分には敵陣の左コーナーそばでボールを奪い合った。私の目の前だ。思わず必死に声援を飛ばしていると、すぐそばで同じように「カマダ!」と誰かが叫んだ。発音からして現地のサポーターだろう。ふと、ブライトンではそこらじゅうにいた日本人サポーターが、ここではやけに少ないのに気づいた。肌感覚では3分の1くらいだろうか。
35分にクリスタル・パレスが最初の決定機を生み出した。アダム・ウォートンが左に展開する。鎌田がスルーパスを縦に送り、タイリック・ミッチェルがワンタッチでクロスを蹴り込んだ。大外から飛び込んできたダニエル・ムニョスが合わせたものの、キーパーがセーブ。その流れから鎌田がミドルシュートを放つも、枠を大きく外れた。一瞬、頭を抱えた鎌田だったが、すぐに周囲に目を向けて態勢を立て直した。
前半はスコアレス。今季6位につけているフォレストを相手にやや押され気味だが、悪くはない。上位の相手でも、ホームで不甲斐ない試合は見せられないだろう。
トイレに行く途中、中年サポが「カマダ~」
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ハーフタイムでトイレに行く途中、満面の笑みを浮かべた中年のサポーターが「カマダ~」と叫びながら手を振ってきた。こちらも自然と笑顔になる。彼は極東の島国である日本を訪れたことがあるだろうか。なかったとしても、鎌田のプレーを凝視している彼は、その瞬間、日本とつながっている。フットボールは物理的なボールの蹴り合いだけではない。国境を越えて人と人を接着させる文化なのだ。
午後9時を過ぎてようやく薄暗くなってきた。気温が下がり、自然に両腕で体を抱きしめる。後半になっても鎌田の動きに疲れは見えず、コンパクトにボールをさばいていく。
好機は57分に訪れた。サールがキーパーと交錯して転倒し、パレスにPKが与えられたのだ。エベレチ・エゼが落ち着いて枠の左にゴールを決め、パレスが先制。爆発的な歓喜、咆哮。思わず右手を突き上げた。
しかし、である。その7分後。フォレストがコーナーキックから畳みかける。クリアボールを拾ったネコ・ウィリアムズがグラウンダーのシュートを蹴り込むと、ムリーロがボールの軌道を変えた。あっ。ボールはゴールに吸い込まれ、1対1のタイに。うーむ。やっぱり一筋縄じゃいかないな。
鎌田交代→スタンディングオベーションにこもるもの
その後は一進一退の攻防が続く。そしてその時がやってきた。87分、メンバーチェンジを知らせる掲示板に18番が点灯した。
鎌田、交代――。

