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「マイはものすごく賢い」評価されたのに契約解除…なぜ? “163cmの司令塔”女子バスケ日本代表・山本麻衣(25歳)がアメリカで浴びた洗礼
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宮地陽子Yoko Miyaji
photograph bySam Hodde/Getty Images
posted2025/06/12 11:03
WNBAダラス・ウィングスのトレーニングにキャンプに参加した山本麻衣(25歳)。惜しくも契約を勝ち取ることはできなかった
「コミュニケーションが図れることで、もっと自分の武器を出せていくのかなって思うんですけれど、その部分では、まだ課題がたくさんあるんですよ。(ほかの選手のプレーを)見ていて思うこともあるので、そういうのをうまく伝えられたらなって思います。そこはもどかしい部分ではあります」
英語での日常会話はできても、踏み込んだ話をするためには英語力が足りないと感じる。新しい環境で、積極的に意見を言うことに対する躊躇もあった。そういったことが、山本の持ち味であるコミュニケーション力を阻んでいた。
評価されるも、なぜ“契約解除”に?
5月11日、WNBA開幕の5日前に、ウィングスが山本との契約解除を発表した。コーチから評価してもらえた部分はあったとはいえ、元々、契約が保証されていないトレーニングキャンプ契約という厳しい立場だっただけに、ロスター枠を勝ち取るにはすべての面で期待を上回る活躍を見せつけ、ロスターに入るはずだった選手を外してでも入れたいと思わせる必要があった。2週間という短期間では、そこまでは見せられなかった。
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他国のプロリーグと時期をずらして夏に開催されるWNBAは、チーム数が今季から1チーム増えて13チームになったが、それでもNBA(30チーム)と比べて半分弱。各チームの登録選手数もNBAが2ウェイ契約まで入れて上限18人なのに対して、WNBAは12人と少ない。その人数で、4カ月半で各44試合を戦うわけで、どのチームも即戦力にならない選手を抱えておく余裕がないのが現状だ。
と同時に、たとえ開幕前にカットされた選手でも、必ずしもWNBAで通用しないとは限らないということは、山本自身、キャンプを通して実感したことだという。実際、WNBAでの実績があるような選手でも、サラリーやロスター状況が理由でカットされることはよくあることだ。
自身の契約が解除される前に、山本もこう言っていた。
「ロスターに残れるかどうかは実力だけじゃなくて、ヘッドコーチが求めている選手であるかとか、チームのまわりの選手に合っているかとか、本当にいろんなことが絡んでくる。ロスターから外れたからといって、その選手の能力がなかったのではなく、このタイミングでこのチームには合わなかった選手だったということなのかなって思います。選手も、『どこかには必ず自分を信じてくれる人がいる』と思ってやっています。トレーニングキャンプに参加する選手のマインドって、やっぱりそうなんだなって思いました」
このマインドを知ったことは、山本にも影響を与えた。

