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12年ぶり単独最下位も…“ソフトバンク異変”はなぜ起きた?「柳田(悠岐)の起用には異例の“意見交換”も…」元フロントが分析する「構造的理由」
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/06/11 11:04
ソフトバンクの「生え抜きスター」柳田悠岐。元フロント経験のある小林至さんは「硬直化を防ぐには生え抜きの新スターが必要」という
――「複合的な事情」についてもう少し説明を頂けますか。
小林 私自身が内情を詳細に知っているわけではありませんが、外部から見ていて気になっていたのは、現場やフロントの体制が長年あまり大きく変わっていない点でした。一軍の監督こそ、工藤(公康)さん、藤本(博史)さん、そして小久保(裕紀)さんと代わってきましたが、コーチ陣やフロントの顔ぶれに目を向けると、多少の配置転換はあっても、全体としては大きな構成の変化が見えにくい印象がありました。
もちろん優れた人材やシステムが継続的に運用されていることは、球団経営として理想的な側面でもあります。ただ、どんなに優れた組織であっても、長期間にわたって同じ体制が続けば、柔軟性を失い、硬直化してしまうリスクは避けられません。
常勝軍団ゆえの「硬直化」
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――つまり、常勝軍団を築く上でのシステムの硬直化が弊害となっている、と。
小林 あくまで外部からの印象にすぎませんが、そうした側面があったのではないかと感じています。実際には、現場の方々が多くの努力や工夫をされていると思いますし、今年は城島(健司)さんがCBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)として常勤になったのも、その象徴的な動きの一つではないでしょうか。
現役時代からリーダーシップを発揮し、現場の感覚も熟知している城島さんのような方がフロントの中核に入ることで、より柔軟で時代に合ったチーム運営が期待されます。今まさに組織として「変わろうとしている」最中にあるのだと思います。
――一朝一夕での改革は不可能でしょうが、そういった状況から脱却していくために今後、チームに求められていくものとは?
小林 やはり、生え抜きのスター選手の輩出に尽きると思います。私が在籍していた2005年から2014年も、ちょうど世代交代の過渡期にあたりました。井口(資仁)、城島、川崎(宗則)といった主力がチームを離れ、一方で小久保、松中(信彦)、柴原(洋)は加齢によってパフォーマンスに陰りが見え始めていた。かつての中軸が、次第に第一線を退いていった時期です。
彼らが中核を担っていた1999年から2005年の7年間は、レギュラーシーズンで最高勝率を4度記録し、残る3年も2位と安定した強さを誇っていました。しかし、2006年から2009年の4年間は、他球団の後塵を拝する結果が続きました。その後、松田(宣浩)、本多(雄一)、柳田、今宮、甲斐(拓也)といった新たな主力が台頭し、見事な世代交代が実現しました。
ただ、現在はその次の世代交代が思うように進んでいないように感じます。2017年のドラフトでは、清宮幸太郎選手(日本ハム)を抽選で外すなど、ある程度の「運」に左右される面もありますが、スター選手を見出し、育成していくことは決して不可能ではありません。

