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センバツは「マクドナルド杯」、夏の甲子園は「コカ・コーラ杯」に!?…東大卒元プロが語る“野球エコシステム”の必要性「高校野球の経済的価値は…」
posted2025/06/11 11:03

大手メーカーのプロ野球事業「規模縮小」など野球の地盤沈下を懸念する小林至さん。一刻も早い「エコシステム」の構築が必要だと語る
text by

田口元義Genki Taguchi
photograph by
Hideki Sugiyama
――プロ野球を引退後にアメリカの大学でスポーツビジネスを学び、今も研究する小林さんは、野球界にはエコシステムが必要だと訴えています。「組織が連携し合ってサービスを提供し、お金を回していく」という意味合いにおいて、野球界の現状はどうですか。
小林 エコシステムの整備は、現代のスポーツビジネスにおいて欠かせない視点です。「普及・発掘・勝利」という3つの要素がうまく循環することで、スポーツの価値が持続的に高まっていきます。日本の野球は、すでに「普及」の土台があり、「発掘」も各年代で積極的に行われていますし、近年ではWBC優勝に象徴されるような「勝利」も収めています。
それにもかかわらず、野球人口は減少を続けている。これは、どこかで循環が滞っているというサインであり、長期的には産業としての持続可能性にも関わる課題だと考えています。
なぜ球界で「エコシステム」は構築されない?
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――そういった危機的状況にあるからこそ、エコシステムの早期確立が必要である、と。
小林 おっしゃるとおりです。スポーツにおけるエコシステムとは、単に収益を生む仕組みではなく、関わるすべての人が持続的に関与できる環境のことです。多くの研究者や関係者のあいだでも「いま野球界に必要なのはこの循環の構築だ」という意見は共有されつつあります。
――日本の野球界でエコシステムが確立されない大きな理由とは?
小林 構造的な分断が最大の要因です。高校・大学野球は日本学生野球協会の傘下にありますが、それ以外のカテゴリー、たとえば学童野球や中学軟式はボーイズ、リトル、シニア、全日本軟式野球連盟など複数の団体が独立して運営しています。社会人野球は日本野球連盟、プロ野球は日本野球機構(NPB)と、それぞれが縦割りで統一的な戦略が立てにくいのが現状です。
たしかに、全日本野球協会(BFJ)という団体もありますが、これは国際大会派遣などに限定されており、実質的な統括機能を果たしているとは言えません。その点、サッカーやバスケットボールはJFAやJBAがトップから育成年代まで一貫して統括しています。野球界も今後はエコシステムの視点から、カテゴリーを越えた連携と調整が必要だと思います。