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“3年連続最下位”中日ファンの本音「今日も0点。まあ、しょうがないかぁ…」中日ファン歴50年の“中華料理店”で聞いた変化「昔は他球団ファンが店内でケンカ」 

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田中仰

田中仰Aogu Tanaka

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posted2025/06/04 11:35

“3年連続最下位”中日ファンの本音「今日も0点。まあ、しょうがないかぁ…」中日ファン歴50年の“中華料理店”で聞いた変化「昔は他球団ファンが店内でケンカ」<Number Web> photograph by KYODO

写真は2010年10月、中日のセ・リーグ優勝の日。ドラゴンズファンの聖地、中華料理店「ピカイチ」で

「その影響でしょうね。店の前にペンキを撒かれたんです。もちろん警察に被害届を出しました。それ以来、チーム状況について発言するのはやめようと。そう決めたんです」

 14年前の話である。ペンキ事件は兵頭さんの記憶から消せない傷になっているようだった。1階の張り紙がまだ白かった時代。殺伐としていた店内を思いうかべた。

落合時代は「警備員を雇ったことも…」

「25年前、星野(仙一)さん時代もそうでした。試合に負けると『くそ……』みたいな悔しい雰囲気が店内に流れる。とくにシーズン終盤の9月、10月になると空気が重くなりました。でもドラゴンズに限らず、昔は他の球団もそんな感じだったと思います。中日が強かった時代、うちが他球団ファンの矛先の一つになっていた。贔屓チームの応援歌を歌いながら店になだれ込んできたこともありましたから」

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 優勝すれば店も沸いた。万歳三唱から振る舞い酒まで。お祭り状態と化した。

「店に入り切らないくらいお客さんが来る。外にあふれちゃって。警察から自主警備をしてくれと言われて、警備員を雇ったこともありました。車が通れないと迷惑かけますからね。2007年の日本シリーズ、完全試合が消えたことがあったでしょう? あれも僕らスタッフはまったく知らなかったんですよ。『山井(大介)の交代、どう思います?』ってお客さんに言われても、何のことだかわからんくて。忙しすぎて優勝当日は試合を見られる状況じゃなかったんです」

「今日も0点かぁ…まあ、しょうがないかぁ」

 2012年を最後に中日はクライマックスシリーズに進出できていない。同時にここ15年で変わったものがもう一つある。ファンの傾向だ。

「昔はおじさんがお客さんの中心だったんですよ。でも今は若い方も、女性客も多い。ドラゴンズの悪口を言うより、明るく応援しようよという雰囲気です。今のファンの方たちはみなさん優しいです」

 CBCアナウンサー、若狭敬一氏の言葉が頭に浮かぶ。近年の中日は若手選手を応援する女性ファンが増えた。その傾向はピカイチにも表れているようだ。

「思い出してみると優勝に向かっていく時ってやっぱりこう、一体感のあるうねりが生まれるんですよ。それが今はないですね。いい悪いではないんだけども。優勝が近づいていく、あの感じを味わいたいというのはありますね」

 料理長の畠山衆拙さんもうなずく。

【次ページ】 「今日も0点かぁ…まあ、しょうがないかぁ」

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