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原辰徳が不安を吐露「“財布に2万円”で外出…心細いんだよ」元巨人ヘッドコーチ・岡崎郁が語る“原辰徳の素顔”「僕の財布には1万2000円しか…」
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岡野誠Makoto Okano
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/06/01 11:00
巨人監督通算17年でリーグ優勝9回、日本一3回。原辰徳の素顔とは
「お前もたまには当たるな」
5月14日の広島戦(マツダスタジアム)で、「1番・センター・鈴木尚広」が実現する。1本ヒットを放ち、翌日もスタメンで起用される。しかし、2回に丸佳浩の飛球を好捕した際、右手薬指を強打して交代。その後、故障が癒えると交流戦でも先発の機会を与えられ、尚広が名を連ねると3連勝した。
「珍しく、原監督が褒めてくれましたね。『お前もたまには当たるな』って(笑)」
一時的な効果は出たが、長くは続かない。直近4試合で3試合の完封負けを喫した6月9日のソフトバンク戦後、岡崎はもう1つの作戦を提案した。
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「あまりにも点を取れないのに、捕手を3人ベンチに入れていたんですよ。控えは加藤(健)と實松(一成)だったかな。でも、(阿部)慎之助がレギュラーでほとんどフル出場する。だったら、1人落として二軍から打てそうな選手や足の速い選手を上げた方がいいと思ったんです」
“2万円”をめぐる攻防
岡崎:監督お願いがあります。
原:なんだ?
岡崎:キャッチャーを2人制にしましょう。3人目の出番はないですから。
原:俺はキムタク(木村拓也)のことがあってな……。
岡崎:キムタクだって、立派に守ったじゃないですか。何かあったら、寺内(崇幸)ができます。使わない選手が1人いたら、もったいないですよ。
原の脳裏に苦い記憶が蘇った。09年9月4日のヤクルト戦(東京ドーム)、延長11回に2人目の捕手・加藤健が頭部死球を受け、負傷退場。急遽、セカンドを守っていた木村拓也が10年ぶりに捕手に回った。原は腕を組みながら熟考し、こう漏らした。
「……郁、キャッチャーを3人から2人にするのは、財布に2万円だけ入れて外出するぐらい心細いんだよ」
岡崎はすかさず反論した。
「今日、僕の財布には1万2000円しか入っていません。普通の人は3万も4万も入れてないと思います。財布に2万円入っていたら十分ですよ」
原は目を見開いて「本当に?」と驚いた顔をした。
「本当です。選手に聞けばわかります。なかには100万円を入れているヤツもいるかもしれないけど、2万円入っていれば、1日不安なく過ごせますよ」
原はまだ岡崎の言葉を信じられなかった。もう一度、「本当に?」と確認した。
〈つづく〉

