プロ野球PRESSBACK NUMBER
自作自演のピンチ脱出劇に新庄剛志監督が絶妙ニックネーム「明日から“さいこう ゆきや”に」日本ハム齋藤友貴哉の告白「自分が生まれ変われた試合」
text by

酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2025/06/21 11:02
ピンチを脱出して両手をつき上げる日本ハム・齋藤友貴哉投手
「満塁にしてしまったとき、『ヤバイヤバイ……』というタイガース時代にあった感情が出てしまったんです。自分のことを責めていました。でも、建山さんに『もう抑えるしかない』と言われて、なるようにしかならない、攻めるしかないと覚悟を決めました」
試合後、新庄にはピンチを招いたバント処理についてクギを刺されつつも、こんなメッセージを伝えられていた。
「球界でトップクラスの真っすぐを持っているんだから自信を持て」
ADVERTISEMENT
あの一戦は齋藤にとって悪夢を過去に葬るターニングポイントになった。
「自分が生まれ変われた試合だったと思います。あのとき、ノーアウト満塁を抑えられたのは自分のなかで本当に大きかったです」
派手なガッツポーズでみせた得意顔は、トラウマを克服した手ごたえの表れだった。
10月5日のゴールデンイーグルス戦。齋藤は1点リードの9回、150km台後半の速球で相手を寄せつけず、プロ初セーブをマークした。初めて立ったお立ち台も、堂々としたものである。「行くだけ!」と連呼し、またもファンの話題を集めた。マウンドであたふたする姿は消えていた。
「ファイターズに来てメンタルというか、心の持ち方がすごく変わったと思っています。自分はもう、荒れ球を全然、気にしていません。ストライクゾーンに行けばOKなので。それに、スライダーやフォークといった変化球にも自信があるんです」
「田中正義と切磋琢磨していきたい」
いまもなお、クローザーの座を目指す日々がつづく。ここまで柳川大晟や孫易磊や玉井大翔もセーブを挙げ、ライバルがひしめく。そこには、絶えず競争をうながし、やすやすとポジションを与えない新庄の冷徹さが滲み出る。そして、齋藤にとって「最大の壁」は昨秋、ファンフェスで新庄からダブルストッパーとして指名された田中正義だろう。6月19日現在でチームトップの11セーブを挙げ、相変わらずの存在感を示している。
齋藤は屈託がない表情を浮かべて声をはずませる。

