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覚醒のワケは「バッキバキになったので、アハハ」…女子400m“17年ぶり日本記録超え”の衝撃 「陸上界の新ヒロイン」フロレス・アリエ(20歳)とは何者か
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別府響Hibiki Beppu
photograph byAFLO
posted2025/05/12 17:10
静岡国際陸上の女子400mで日本記録超えのレコードを叩き出した日体大3年のフロレス・アリエ。現在、日本国籍取得中の新星が秘めた可能性とは
そんな中でも腐らずトレーニングを続け、チームメイトにも刺激を受けて少しずつ復調。昨年9月の日本インカレで200m、400mで二冠を果たすと、10月の国民スポーツ大会300mでは、日本記録を上回るタイムをマーク。その潜在能力の片鱗を見せはじめていた。
今季の躍進の理由を尋ねると、本人はこう分析しているという。
「やっぱり(冬季練習で)筋肉量が増えたことが大きいですかね。体重は去年までと変わらないんですけど、筋肉が増えて、体脂肪が減った。それが自分の身体的には調子が良いんじゃないかと。バッキバキになりました、アハハハ(笑)」
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フロレスはそう嘯くが、確かに特に上半身のフィジカルアップは素人目に見ても分かるレベルで、他の選手とは一線を画す。163cmの身長はスプリンターとしては決して大柄ではないが、筋力増による出力アップにも、持て余すことなく順応できているようだ。
国籍が取れれば「もう一度、日本記録に…」
今後は日本国籍の申請許可を待つとともに、「もし国籍が取れれば、もう一度日本記録に挑戦したい」と意気込んでいる。
千葉が出場した2009年のベルリン世界陸上を最後に、女子400mで世界選手権やオリンピックに出場した日本人選手は現れていない。誤解を恐れずに言えば、いま日本の女子ロングスプリント種目は低迷期を迎えていると言っていい。
そんな中に、突如現れたニューヒロインは、大きな可能性も覗かせる。
9月の東京世界陸上の女子400mの開催国枠エントリー設定タイムは51秒74。フロレスが静岡国際でマークした自己ベストは、その記録を上回っている。もちろん日本国籍取得が条件とはなるが、うまくいけば秋の大舞台では、16年ぶりに400mで世界と戦う日本人選手の姿を見ることができるかもしれない。


