「中日の酷使で潰されたのでは？」29歳で引退“消えたスーパールーキー”上原晃の答えは…「星野さんに恨みはない」「やっと諦められたね」55歳の告白 

“中日の監督になった同期”立浪和義への本音

　98年かぎりで現役を引退。まだ29歳だ。家族を養うためには仕事をしなければならない。どうしようかと考えているとき、知り合いから整体師が合っていると勧められた。

　思えば、ひたすら野球に打ち込んできた人生だった。デスクワークは向いていないだろうし、食いっぱぐれがないように手に職をつけたい。自分は職人気質だとも感じていたため、すぐに整体師の世界に飛び込んだ。

「プロを引退してからずっとこの世界にいて、とにかく仕事は楽しいです。人の体を治療して、良くなっていく過程が目に見えてわかる。お金を稼ぐことが楽しいんじゃなくて、治していくことが楽しいんですよ」

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　よほど整体の仕事が向いていたのだろう。上原は何度も笑顔で「楽しいですよ、毎日」と口にした。

　今、上原は整体師を本業にしながら、東海学園大学硬式野球部コーチとして学生たちの指導にあたっている。過去に少年野球、中学、高校とアマチュアを教えた経験と、プロで味わったさまざまな経験。それを伝えるという意味で、このコーチ業もまた“天職”だと言えるかもしれない。

　一方、入団時から仲が良かった同期の立浪和義は「ミスタードラゴンズ」の称号を継承して通算2480本安打を放つまでの名選手となり、それぞれ完全に別の道を歩むことになった。そのことについて尋ねると、上原はあっけらかんとこう答えた。

「野手とピッチャーの違いもあるし、袂を分かったわけではないので、悪い感情は何もないですよ。あれだけ活躍できたのは、タツの努力が報われた結果ですから。むしろ、ライバル心が芽生えたのはひとつ下の今中慎二かな。とにかくタツに関しては、監督時代も応援していたんですけどね……」

2024年まで3年間、中日の監督を務めた立浪和義　©Nanae Suzuki

　昨年まで立浪監督が率いた中日は、3年連続最下位の憂き目にあった。10代から互いを知る同期として、その原因をどう見ていたのか。

「自分のやりたいことがうまくできなかった3年間じゃないですか。球団との兼ね合いのなかで補強もあまりできなかったし。やっぱり『勝つ』と『育てる』を同時にやるのは難しい。育てるってなかなか時間がかかるもんです。だから本当は二軍監督を何年間かやって、そこで自分の手で選手を育ててから一軍でやっていく流れがあれば、違った結果になったと思う。それを一気にやろうとして、ファンも成績を求めるわけだから、難しいですよね」

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