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〈令和7777号〉ロッテ・角中勝也「前夜は焼肉店で…」“7だらけ”のメモリアルアーチ舞台裏「ネガティブ思考が武器」37歳の元首位打者が貫く哲学
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梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2025/05/08 11:02
記念のボールを手にする角中
記念弾の前夜…「奢ったかいがあった」
ホームランを放つ前夜、角中は札幌市内の焼肉店で外野手を集めて食事会を開いた。自然と野球の話題になり、「自分からはあまり言わないけど、聞かれたことには答える」というスタンスで、後輩たちの打撃の質問にも丁寧に応じた。その場にはDHで出場していたグレゴリー・ポランコを含む7人の外野手が参加し、試合当日も外野手陣で7安打を放った。
「外野手で7本ヒットが出たので、奢ったかいがあったと思います」と、角中は目を細めて語る。
プロ19年目、2度の首位打者に輝いた角中だが、打席では意外にもネガティブ思考が武器になっているという。
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「重圧は常にあります。それがプレッシャーかどうかは分からないけど、自分は基本ネガティブ。ポジティブな気持ちだと大振りになってしまう。自信満々だと、コンパクトに“パキーン”といけないんです。ネガティブじゃないと、打てないんですよ」
「ネガティブ哲学」の理由
ネガティブな思考から始まり、最悪のシナリオを考える。そのうえで、どうすればそれを回避できるかを突き詰めていく。そうして無駄を削ぎ落としたスイングが、結果として最高の打球を生み出す。
「ネガティブに考えて、不要なものを排除していく。そういうイメージのほうが結果が出ている気がする。若い頃から、ずっとこの考え方ですね」
2025年のシーズン、代打やスタメンでの出場をこなしながら、一打に魂を込めてバットを振り続けている。令和7777号本塁打が生まれたのは、5番レフトでスタメン出場した4回無死二塁の場面だった。
「追い込まれていたので、何とか走者を三塁に進めたい。それだけを考えていました。進塁打が打てれば、と思っていたので、結果は最高でしたが、内容としては想定と違いました」
「今さら個人の記録はいいんです」
ポジティブであれば「タイムリーを打ちたい」「ホームランならなお良し」と考えるかもしれない。しかし角中は「たとえ自分がアウトでも、二塁走者を三塁に進めたい」という最低限の仕事に集中した。それが結果的に最高の一打に繋がったのだ。
陰極まれば陽に転ずる。ネガティブな思考から生まれたコンパクトなスイングが、ポジティブな結果をもたらす。これまで18年間のプロ生活を貫いてきた哲学である。
目標については、オフの契約更改会見から一貫して「個人目標はない。優勝したい。ビールかけがしたい」と語ってきた。
「今さら個人の記録はいいんです。規定打席にも届かないと思うし、タイトルも現実的ではない。とにかく優勝したいんです」
2度の首位打者を誇る男は力強く言い切る。


